バランスチェアと呼ばれる椅子には代表的な商品がいくつかあります。中でももっとも販売台数が多いと思われるのが宮武製作所の「プロポーションチェア」です。
プロモーションチェアは身長110cmの小学1年生から180cmの大人まで高さ調整が可能な構造で、子供の成長に伴う買い替えの必要がなく合理的。しかも、バランスチェアとしては低価格です。主にその2点が消費者に支持されていると考えられます。
一方で、私はあまりプロポーションチェアをオススメしていません。プロポーションチェアのようなX字型のバランスチェアは、子供が座ると座面が急勾配になり膝に負担が掛かりやすく、逆に身長が高い大人が座ると座面が水平に近くなって膝をかなり曲げるかたちになるからです(下図参照)。
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もうひとつ、プロポーションチェアはクッションがとてもチープなんです。モールドウレタンを使っている國新産業の「バランス(R)チェアN5070」や、バランスラボの「バランスイージー」とは耐久性がまったく違います。張地の丈夫さでも劣りますから、子供から大人まで使えると言っても結局は途中で買い替えざるを得ないはずです。
宮武製作所もそういう自覚があったのでしょうか。このたびクッションなどを改良した高級モデルを発売しました。
※この記事は2026年1月14日時点の情報に基づいています
宮武製作所/プロポーションチェアSOLA(ソラ)
新発売のプロポーションチェアの最高級モデルは「SOLA(ソラ)」と言います。カラフルな従来型と異なりシックな印象で、見るからに高級感が漂います。
しかし、見た目が上品なだけではありません。最高級モデルと謳うだけあって、それに見合うコストを掛けているのです。
座面に低反発ウレタンを使用
まず座面には低反発ウレタンを使用しています。手で押すとゆっくり元の形に戻るウレタンで、体圧分散性に優れています。つまり、長時間座ってもお尻が痛くなりにくい素材と言えます。
低反発ウレタンは密度が高いことも特徴のひとつで、従来のプロポーションチェアで使われているウレタンよりも耐久性が期待できます。目安としてベッド用マットレスなら10年くらい使える素材です。
低反発ウレタンの下にはウレタンとチップウレタンを入れ、三層構造としています。ウレタンを挟んだ意図が不明なのですが、その下のチップウレタンはコストを抑えるだけでなく、一定の硬さと反発力を得る目的だと考えられます。
一般的に「ウレタン」とだけ表記する場合は、一般ウレタンまたはソフトウレタンを指します。低級材のラバーウッドやパインを天然木と表示するのと同様に、不都合なことが含まれることが多いです。この場合は低密度、もしくは中途半端な反発力や硬さの板ウレタンということでしょう。
チップウレタンに荷重分散性を求めているとしたら、中間に挟んだウレタンはおそらく膝置きとしての成型が目的です。低反発ウレタンばかり使うとコストが上がるため、コストを下げたかったのだと思います。
膝置きにポケットコイルを使用
膝クッションにはポケットコイルを使用しています。ポケットコイルは一般的に10年以上の耐久性があります。その上のウレタンや、コイルの周りを囲っているチップウレタンは、毎日長時間座っていれば5年程度の寿命となりますが、従来のプロポーションチェアよりはずっと耐久性が高いはずです。
OEKOTEX認証生地を使用
座面や膝置きの張地について、商品説明には”強度の高いOEKOTEX(R)生地を採用”と書かれています。しかし、OEKOTEX(エコテックス)は有害な化学物質が含まれていないことを証明する世界最高水準の繊維認証のことです。最近は寝具や衣類などでよく使われていますが、それを以って強度が高いことを示すわけではありません。
ただ、引っ搔きに強い、毛玉ができにくい、撥水性が高いとも書かれていますから、従来モデルのポリエステルまたはアクリル生地よりは丈夫であることは間違いなさそうです。
フレームにブナを使用
従来のプロポーションチェアにはラバーウッドと思しき材が使われていましたが、ソラにはバランスイージーと同じブナが使われています。木目が少なく、ラバーウッドよりも高級感のある材です。
一方で、塗装は従来品と同じくラッカー塗装。この点はウレタン塗装を使っているバランスイージーに劣ります。ラッカー塗装はコストが安いだけでなく速乾性に優れるためメーカーにとって好都合なのです。しかし、変質しやすいため高級家具で使われることは現在はほとんどありません。
従来品とは少し違う構造
ソラも従来品と同様に、基本的には座面下のネジを回すことで高さを無段階調整できる構造なのですが、若干異なることろもあります。
従来品は膝クッションを2枚重ねにすることで子供の身長に対応させていましたが、ソラは膝クッションの下に木製のスペーサーを挟む仕様です。膝クッションを2枚重ねにするよりも見た目が美しいだけでなく、安定感も高まります。
また、従来品は座面の取り付け位置が前後2段階でしたが、ソラは3段階になっています。より微妙な調節が可能になったと言えるでしょう。
キャスターは無し
従来品は前後に移動しやすいキャスター(コロ)付きでしたが、ソラにはキャスターが付いていません。従来品のセールスポイントのひとつだったものを外してしまうというのは矛盾を感じるものの、バランスイージーのイメージに寄せたかったのかもしれません。
大人も子供も同じ高さという不思議
プロモーションチェア・ソラは子供から大人まで座れるように座面高の調整ができるという点が大きな特徴です。しかし、商品ページを見ると、すべて子供も大人も同じ高さで使っているのですね。上の写真の場合、あきらかに大人が座っているほうの座面が高すぎです。
これは高さを揃えたほうが美しく見えるためというのがひとつの理由であると考えられます。一方で、うがった見方をすると、座面を高くするとお尻が滑り落ちそうな角度になったり、低くすると膝が窮屈に感じられるのがバレないようにするためではないかと考えてしまいます。
いずれにせよ、商品写真に惑わされないように注意したいものです。
バランスイージーとの比較
最後に、ソラがベンチマークにしたと思われるバランスイージーと比較してみましょう。
まず材質から、ソラはクッションに低反発ウレタンやポケットコイルを使用している一方、フレームのブナ材はウレタン塗装ではなくラッカー塗装。せっかく良い木材を使っているのですから、敬意を払ってもらいたいものです。
サイズはソラのほうがコンパクト。バランスイージーでは収まらない学習机でもソラなら収まるということもあるでしょう。ちなみに、「バランス(R)チェアN5070」もソラと同じ幅48cmです。
対応身長はいずれも110~180cm。座面高が一定のバランスイージーが子供から大人まで対応可能と言い張るのはどう考えたって無理がありますが、X字型で座面や膝置きの角度が変わってしまうプロポーションチェアも無理があります。この点に関してはどっちもどっちでしょう。
耐荷重はバランスイージーが100kgなのに対し、ソラは80kg。これは高さ調節できる仕組みのため致し方ないと思います。
従来のプロポーションチェアは台湾製ですが、ソラは不明。バランスイージーは日本製です。また、バランスイージーには90日間返品保証が付いている一方、ソラにはなく、それでいて価格はほとんど同じです。返品コストを考慮すると、ソラのほうが割高感がありますね。
基本的に私は、後出しで大人用のショートフレームを発売したバランスイージーには良い印象を持っていません。しかしながら、子供用でマトモなバランスチェアが皆無の現状、子供のために購入するならバランスイージー一択でしょう。お子さんが成長したら、ショートフレームかバランス(R)チェアN5070に買い替えてください。
というわけで、耐久性に不安が多いプロポーションチェアに、高級仕様のソラが加わったことは結構なことだと思います。一方で、X字型の持つ根本的な問題が解消されているわけではありません。同じ値段を出すならバランスイージーを買ったほうが安心でしょう。
國新産業がバランススタディジュニアを復活してくれれば一番良いんですけどねー。ほかにもっと売上が多い事業領域を複数持つ國新産業にとっては、少子化が進む学習家具を頑張る理由が乏しいのでしょう。仕方がないので、宮武製作所にはプロポーションチェア以外のバランスチェアの開発を期待したいと思います。
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