先日、業界紙の「家具新聞」に経済産業省発表の「2017年木製家具生産出荷統計」の分析が掲載されていました。それによると、”13年と比べると(中略)学習机がメーンの「机」は少子化の影響で36.8%減”と述べられていました。
それを見て私は少し疑問を感じました。5年間のデータを基に分析したとは言え、この5年間のうちに急速に少子化が進んだわけではありません。また、たった5年分のデータではちょっと物足りないように感じました。
そこで、経済産業省のホームページから遡れる限りデータを拾ってみました。
※この記事は2018年3月14日時点の情報に基づいています
木製机の生産出荷統計(1985~2017年)
上表は経済産業省の「生産動態統計年報 繊維・生活用品統計」(2001年以前は経産省または通産省の「雑貨統計年報」)より抜粋した、「木製家具-机」の生産数、販売数、販売金額、年末在庫数を一覧にしたものです。2010年以前はPDFファイルで管理されているため、数字を書き出すのに難儀しました(苦笑)
ともあれ、頑張って一覧表を作ったものの、ミスったことに気付きました。たとえば2017年の販売数は約9万個、販売金額は約22.8億円となっていますが、いくら学習机が売れなくなったとは言え、ここまでひどくはありません。
ここに挙がっている数字は基本的に、従業員数50人以上の、いわゆる国産家具メーカーのみなのです。つまり、ほぼ100%海外で生産している大手学習机メーカーはここに含まれていないわけですね。
もっと言えば、国産大手学習机メーカーの数字すら含まれているか怪しいものです。販売金額=工場出荷額と思われますが、カリモク家具と浜本工芸を足すだけでも2017年の約22.8億円は超えてしまうと考えられるからです。おまけにここには学習机以外の書斎机なども含まれています。
ナントカ商工リサーチの調査と同じで、中小企業のオッサンがこんな調査にまともに答えるはずがありません。ここに挙がっているのは、従業員数50人以上とそれなりの規模の国産家具メーカーで、非常に奇特なところだけでしょう。
まあそうは言っても全体の流れを補足するには多少は役立つだろうということで、引き続き詳しく見てみたいと思います。
生産販売ともに1985年比10%以下に
ただ数字をズラーッと並べても分かりにくいと思うので、グラフにしてみました。まず生産数と販売数を見てみると、上表のようになります。
2017年の生産数は1985年と比較して約91%のマイナス、同じく販売数は約92%のマイナスとなっています。この30年ほどで10%以下になってしまったというわけです。
とは言え、1985年当時は現在とはまったく事情が異なります。高度成長期までは日本にとって家具は輸入するものではなく輸出するものでした。学習机に関しては分からないものの、おそらくほとんど国産で賄われていたのではないかと思います。
財務省の「貿易統計」によると、1988年の家具輸入量は約18万トン、対して2017年は約152万トンと、実に約8.4倍にもなっています。学習机を含め家具の輸入が増えるとともに、国内生産が減少したと考えられます。
販売金額も1985年比で約10%に
次に木製机の販売金額を見てみると、2017年は1985年と比較して約90%の減少となっています。販売数が約92%の減少となっていることを踏まえるとちょっとマシですが、ほぼ一致していると言うほうが正確でしょう。
年末在庫数は減るも在庫率は3倍近くに
年末在庫数について見ると、生産数や販売数と同じようなグラフを描いているように見えます。しかし、生産数や販売数は90%程度減っているのに対し、年末在庫数は約74%しか減っていません。
在庫率(年末在庫数/生産数)を計算してみると、1985年は約7.7%であるのに対し、2017年は約22.6%となり、約2.9倍に膨れ上がっています。2017年は2016年に比べて約13%も在庫が積み上がっている状況とは言え、この在庫数はちょっとマズイですねー。
ほかの業界ではできるだけ在庫を持たない経営にシフトしていることを考えると、家具業界は完全に逆行してしまっています。
新入学児童はこの30年余りで約37%減
ここまで見てきた通り、国産の木製机の生産数、販売数、販売金額は、いずれも約9割ダウンとなっています。しかし、新入学児童がそんなに減っているわけではありません。新入学児童数は1985年から2017年にかけて約37%の減少にとどまっています(出典:文部科学省「学校教育総括」など)。
また、2013年から2017年にかけては、新入学児童数は約2.2%の減少となっています。家具新聞では”13年と比べると(中略)学習机がメーンの「机」は少子化の影響で36.8%減”と述べられていましたが、数字を見る限り木製机の販売減は少子化の影響とは言えないでしょう。
ちなみに、新入学児童のピークは1954年の約255万人です。いわゆる第一次ベビーブーム世代、団塊の世代ですね。その子供の世代が第二次ベビーブーム世代で、1980年に新入学児童が約206万人となり、以降は基本的に減少の一途で、2017年の新入学児童は約106万人でした。
学習机に関するデータとしては、ほかにJOIFA(一般社団法人日本オフィス家具協会)学習用家具部会が公表しているものがあります。JOIFAのデータは基本的に大手4社(コイズミファニテック、イトーキ、くろがね工作所、オカムラ)に限られると考えられますが、2018年度の学習机の年間購入率は55%、平均購入価格は70,800円と予想していますので、その市場規模(小売販売価格)は約414億円と考えられます。学習椅子なども含めると500億円以上にはなるでしょう。
一方で、今回扱った木製家具生産出荷統計から推定される小売販売価格は、せいぜい60億円程度です。JOIFAが公表しているデータから推定される小売販売価格と比較すると14%程度に過ぎず、学習机市場全体を補足するには物足りません。
つまるところ、今回扱ったデータから学習机市場全体を把握することはできないわけですが、木製家具生産出荷統計を以って学習机市場を悲観することもないと思います。学習机メーカー各社や学習机を扱う販売店には、今後とも時代に合わせた製造販売活動を期待したいですね。
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