学習用LEDデスクライトのスペックを見ると、「JIS規格AA形相当」などと書かれていることがあります。それを見て「なんだかよく分からないけどスゴそうだ!」と妙な納得の仕方をしてませんか?
JIS規格(日本工業規格)というのは簡単に言うと、日本国が決めた工業製品の規格です。A3用紙とかB5用紙とかもJIS規格によって定められています。A3用紙を見せられて「JIS規格A3相当」なんて言われても「おお~っ!」とは言いませんよね。だいたい、A3用紙を買うときに「A3相当」とか言われても困るわけで(苦笑)
では「JIS規格AA形相当」とはどういう意味なのか。今回はそれについて説明したいと思います。
ポイントは照度分布図にあり!
LEDデスクライトのカタログを見ると、上のような照度分布図が記載されていることが一般的です。これがつまりJIS規格A形ないしAA形相当であることを証明するものとなります。
ちなみに、照度分布図が示されていないデスクライトも多いというか、むしろ示されていることのほうが少ないです。照度分布図を示すことなく「目にやさしいデスクライト」などと謳っているものはほぼ100%ウソっぱちです。学習用として選ぶなら、照度分布図を示していないデスクライトなど候補から外してしまって良いでしょう。
JIS規格AA形とは
JIS規格AA形とは以下のように規定されています。
- スタンドの前方半径50cmの1/3円周上:250ルクス以上
- スタンドの前方半径30cmの1/3円周上:500ルクス以上
文字だとパッと見て理解しにくいかと思いますが、それを表したのが上図です。冒頭の山田照明のZ-10Rの照度分布図と比べてみると、Z-10Rは「JIS規格AA形相当」と言えることが分かると思います。
ちなみに、JIS規格A形は半径50cmの1/3円周上で150ルクス以上、同じく半径30cmで300ルクス以上となっています。つまりAA形とA形を比較するとAA形のほうが明るいと言えます。
なぜAA形「相当」?
JIS規格AA形についてより正確に説明すると、「JIS C 8112」によって規定されており、これは蛍光灯卓上スタンド(勉学・読書用)についての項目となっています。その中でいくつかの区分が設けられており、「机上面照度による区分」としてAA形、A形、一般形の3つの区分があります。なお、一般形には机上面照度の規定はありません。
そして、「JIS C 8112」の内容をチェックすると、これにはLEDに関する記載は一切なく、あくまで蛍光灯卓上スタンドについての規定であることが分かります。これが改訂されたのが2006年のことで、当時はまだLEDデスクライトが普及していませんでした。一方で現在、LED卓上スタンドに関する規定がないために「AA形相当」と言っているのだと考えられます。
もう1点、「セードの適正な位置」を表示するよう規定している一方で、照度を測るうえで重要な光源からデスク天板面の距離について指示がありません。これはおそらく製品のアーム長に依存するところが大きいからだと思いますが、こういうあいまいな条件が前提となっていることも「AA形相当」と表記する一因となっているのかもしれません。
AA形相当だから安心…というわけではない
つまるところ、「JIS規格AA形相当」は「同A形相当」よりも一般的に明るいとは言えますが、光源からデスク天板面の距離は製品によって30~60cmまである程度幅があるので、一概に言えないところもあります。距離が短ければ短いほど照度は高くなりますからね。
また、学習用としてのLEDデスクライトを買い求めるにあたっては、「JIS規格AA形相当だ!ドヤ!?」と謳っているようなものはどうかと思います。明るければ良いというものではないからです。
実際に学習机メーカーの方にJIS規格AA形について尋ねると、ちょっと困ったような顔をされることがあります。真意は分かりませんが、消費者はそういう基準を求めるけれど、メーカーとしては必ずしもそれが良いと思っていないということではないかと私は考えています。
現状、JIS規格A形よりもAA形のほうが明るいと言えるわけですが、LEDデスクライトが普及したこともあって、もし規定が変わって新たにもっと明るいAAA形ができたとしましょう。そうすると消費者には「AA形よりもAAA形のほうが優れている」と思われかねません。その結果、目に良い悪いの話ではなく、照明器具としての明るさ競争になってしまう可能性があるのです。
JIS規格では光源直下照度についての言及はありませんので、強力なLEDを使って無理矢理にJIS規格AA形相当としているものが結構多いんですね。強力なLEDチップを使うと、光源直下照度がかなり明るくなってしまいます。しかし、私は光源直下照度が明るすぎるのは良くないと考えています。ハッキリ言って眩しすぎるし、周囲と明暗の差がつきすぎて、むしろ目に悪いように感じるのです。
その点、学習机メーカーが作るLEDデスクライトは非常によくできていて、光源直下照度が明るすぎることがないようにセーブしています。学習用LEDデスクライトは天板の隅々まで万遍なく明るいことが一番大事なのです。
そんなわけで、「JIS規格AA形相当だから優れている」とはまったく言えません。せいぜい、「ちゃんと法律に則って作っていますよ」という程度に考えてもらうのが良いのではないかと思います。
学習用LEDデスクライトを選ぶときは、JIS規格AA形相当であるだけでなく、直下照度が2000ルクスを下回り(できれば800~1500ルクスが理想)、調色機能を備え、子供でも操作しやすいボタン配置、かつアームの耐久性が高くてスムーズに動かせるものを選ぶようにしましょう。
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