2018年に「BALMUDA The Light(バルミューダ ザ・ライト)」が発売されたときはちょっとした話題になりました。デスクライトと言えば2~3千円の安物ばかり売れると言われていた中、デザイン家電のバルミューダが約4万円という高価な商品を投入したことに加え、山田医療照明と共同開発したという本物志向も注目されました。
バルミューダ ザ・ライトにはいくつかの特徴がありますが、もっともユニークなのは「フォワードビームテクノロジー」という、目線の先に影を作らない光です。特に子供は一生懸命に絵を描いていたりすると頭が下がってきて、頭であかりを遮ってしまいますからね。そうならないように光が鋭角で手前に伸びるように工夫されいるのです(下図参照)。

実際のところ、この機能は子供に姿勢を正すことを意識させないため、私は否定的に見ています。他のデスクライトメーカーも同様に捉えているのか定かではありませんが、バルミューダ ザ・ライトの発売から7年が経つ現在に至るまでフォワードビームテクノロジーのような機能を持つデスクライトは皆無です。
…と思っていたら、オーム電機から登場しましたねー。今回はそれを紹介したいと思います。
※この記事は2025年12月17日時点の情報に基づいています
オーム電機・AS-LDR772K-K

こちらがオーム電機から発売された、フォワードビームテクノロジーのように手前に光が伸びる機能を持つデスクライト「AS-LDR772K-K」です。
デザインはバルミューダ ザ・ライトとはまったく違ってごく普通の感じ。もちろん山田医療照明は関係しておらず、特殊な光源を使っている様子も窺えません。しかも、価格は6千円台からとお手頃です。
なお、AS-LDR772K-Kは直下1800ルクス以上、JIS規格AA形相当でデスク天板が100×60cm程度であれば十分に照らすことができます。無段階調光、3段階調色機能を備え、Ra95の高演色です。安かろう悪かろうではありません。
手元が明るくなる設計

さて、オーム電機のAS-LDR772K-Kの手前に光が伸びる機能についてより正しく説明すると、商品説明では”直接目に光があたらない構造で手元が明るくなるように設計”されていると書かれています。”目線の先に影を作らない光”を特徴とするバルミューダ ザ・ライトとは異なり、オーム電機は手元を照らすだけでなく、光が直接目に当たらないことを重視していることが窺えます。
光源を斜めにすることで実現

では、オーム電機はどのように工夫して、”直接目に光があたらない構造で手元が明るくなるように設計”したのでしょうか。幸い、地元のケーズデンキに展示があったので確認してきました。
その結果、上図のような構造になっていることが分かりました。シェードの内側に光源が斜めに取り付けられており、シェードを真下に向けているつもりが、光源はそれよりも手前を照らすようになっているわけです。タネを明かせば簡単なことなのですが、上手く考えたものだと思います。
ちなみに、一般的なデスクライトでもシェードを手前に傾ければ同様に手元を照らすことは可能です。ただしその場合は、光源を直視することになり眩しくてたまりません。AS-LDR772K-Kは手前側をシェードで覆っているため、光が直接目に当たらないわけです。
実はあまり意味がない機能

オーム電機の”直接目に光があたらない構造で手元が明るくなるように設計”した仕組みは良くできていると思います。しかし、実はあまり意味がない機能ではないかというのが私の考えです。
結論を先に述べると、デスク天板の奥行が60cm程度の範囲でJIS規格AA形相当の(=半径50cm以上を十分な照度で照らすことができる)デスクライトのあかりをさらに手前まで届くようにしても、天板よりさらに手前側(ユーザーの胸あたり)を照らすだけだからです。
上図をご覧ください。取扱説明書から引用したもので、黒字は記載のまま、青字と黄色い光は私が書き込んだものです。目の位置は事実と異なるので、上方向に私が修正しています。
シェードから目の位置までが水平方向に60cmというのは、シェードから60cmほど離れたほうが目の安全を確保できると捉えることもできますが、説明が一切ないため根拠や目的は不明です。ちなみに、上図では天板の奥行が113cm以上あるように見えます。普通ではあり得ない寸法です。
目の位置が高さ35~40cmというのは、おそらく一般的な身長の大人がデスクに向かうときの目線の高さです。ちなみに、身長179cmで座高が高い私は約50cm、小学1年生では30cm程度になります。もちろん、いずれも背筋を伸ばした状態です。
上図の通り、光源がシェードに遮られた状態であれば光が目に直接入ることはありません。また、少し頭を下げたくらいでは手元が影になることもないでしょう。
一方で、ほかのJIS規格AA形相当のデスクライトであっても、半径50cmまで十分なあかりが届くわけですから、AS-LDR772K-Kの優位性には疑問符がつきます。また、光が目に直接入らない仕組みを採用しているデスクライトは既にたくさんあります。
「デスク奥の壁を照らすことなく光を手前に向けているので効率が良い」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは誤解です。デスク奥の壁に当たった光は反射して和らげられた状態で手元を照らしてくれます。
光って、空気を照らしても意味がないんですよ。壁や天板を照らして初めて明るさを実感できます。そして、壁や天板に反射させた光のほうが眩しさが軽減されます(鏡など反射率が高すぎるものは除く)。ちなみに、デスクライトはLEDの光をそのまま照射しているのではなく、シェード内側の反射板やシェード下面のカバーで反射や屈折をさせることで、光を拡散したり眩しさを軽減させています。
つまるところ、AS-LDR772K-Kの”直接目に光があたらない構造”は今や珍しいものではなく、また、”手元が明るくなるように設計”されているのも天板の奥行や壁への反射を考えた場合にはほとんど意味がないことと言えます。
AS-LDR772K-Kの〇と×
以上の通り、目玉機能は実はほとんど意味がないと考えられるわけですが、だからと言ってこのデスクライトがダメということはありません。キラリと光るところがいくつもあります。
操作しやすいタッチボタン

シェードの上面または下面に操作ボタンがあって子供では扱いにくいデスクライトが多い中、AS-LDR772K-Kは支柱の根元にタッチボタンがあり、子供でも扱いやすいのは大きなメリットと言えます。もちろん、大人も使いやすいです。
JIS規格AA形相当で照射範囲が広い
照度分布図は明示されていないものの、JIS規格AA形相当なので半径50cm以内は250ルクス以上あり、学習机で一般的な100×60cmの天板面を十分に照らすことができます。
無段階調光・3段階調色

調光ボタンを長押しすることで無段階で調光が可能。また、調色ボタンを押せば3段階で調色が可能です。なお、色温度は2700ケルビン(電球色)、4200ケルビン(白色)、6500ケルビン(昼光色)となっています。
ちなみに、デスクを再点灯する際は以前に使用したときの照度と色温度が再現されるメモリー機能が付いています。
Ra95の高演色

バルミューダ ザ・ライトのRa97には劣るものの、AS-LDR772K-Kは十分すぎるくらいのRa95の高演色を誇ります。実際のところ、素人目では違いなんて分からないですけどね。
合計約100cmのロングアーム
AS-LDR772K-Kは高さ546×奥行530mmあり、下アームと上アーム合わせて100cm程度の長さがあります。これはつまり、幅100cmのデスクの左または右側面にクランプしても、上アームが50cm程度あるので中央部にシェードを持ってこれるということです。JIS規格AA形相当でもシェードを中央に持ってくることができなければ意味がないですからね。
ボールジョイントの動きが良い
シェードとアームはボールジョイントで繋がっています。これが実にヌルヌル動きます。なので、シェードの向きや角度を変えるのがスムーズです。
6千円台からのお手頃価格
これだけ良くできていて、価格はなんと6千円台からと低価格(2025年12月17日現在、amazon販売発送の場合)。同価格帯にはコスパの良いデスクライトがいくつかありますが、十分に渡り合えると思います。
アームの関節が硬い
一方で、イマイチなところもあります。まず、下アームの根元と上下アームの関節がかなり硬いです。
もっとも、AS-LDR772K-KはJIS規格AA形相当なのでシェードの位置を変える必要性はほとんどありません。そこを割り切ればまったく問題ないとも言えます。
ブラック色しかない
家電量販店のデスクライト売場を見ると、最近はホワイト系のほうが圧倒的に多いです。言うまでもなく、そのほうが売れるからでしょう。私がオススメしているジェントス「DK-R115」も、あとから発売されたブラック色のほうが先に廃番になりました。
一方で、AS-LDR772K-Kは今のところブラック色のみ。ホワイト色の追加が待たれるところです。
ちなみに、どうしてもホワイト色ということであれば、サンワサプライの「800-LED093W」を検討するのも良いでしょう。ほぼ同じと言って差し支えないパーツが使われているとともに、スペックも近いです。
以上、オーム電機のAS-LDR772K-Kを紹介しました。肝心の目玉機能があまり意味をなさないものの、基本的なスペックは価格の割りに良くできていると思います。
デスクライトに1万円も出せない、アームは長いほうが良い、オーム電機の「AS-LDC6K-W」のような円形シェードはちょっとイヤという方には、有力候補のひとつになり得るのではないでしょうか。
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