学習机メーカーのひとつとして「くろがね」のブランドをご存知という方は多いと思います。しかし、具体的にどんな机を扱っているかというとピンと来ない人が多いのではないでしょうか。一昔前ならカラーデスク中心というイメージが強かったですが、近年はカラーデスクの人気が少なくなってきて、くろがね工作所も天然木を使ったデスクを増やしているからです。
また、くろがね工作所の学習机を積極的に扱う家具販売店もある一方で、大きな店舗でもくろがね工作所の学習机は扱っていないということがあります。ニトリでもくろがね工作所の学習机は扱われていましたが、2021年度からは扱っていません。
そんなわけで、消費者にとって少し実態が掴みにくいくろがね工作所の学習机の特徴をまとめてみました。
※2025年1月10日更新
くろがね工作所とは
くろがね工作所は大阪市西区に本社を置くオフィス家具メーカーです。年商が2,000億円を超えるオカムラや、同じく1,000億円を超えるイトーキに比べると規模は小さく、直近の年商は約71億円に過ぎません。しかし、オカムラやイトーキの場合は学習机の占める割合が極々僅かですが、くろがね工作所は学習机の売上が推定で最大3割程度を占めます。
くろがね工作所はオカムラに比べると年商が1/20にも満たないものの、学習家具に限って言えば大きなシェアを握る一大ブランドと言えます。よって、コクヨやイトーキのように学習机市場から撤退するという選択肢はあり得ません。
ちなみに、「くろがねは昔、3輪トラックを作っていた」と言われることがありますけど、それは「東急くろがね工業」(現在は日産自動車傘下で日産工機)のことで、くろがね工作所とはまったく関係ありません(オカムラは昔、ミカサという自動車を作っていましたが)。また、ホームセンターの「DCMくろがねや」とも関係はありません。
くろがね工作所の学習机ラインナップ
くろがねの本気「ザ・デスク」
くろがね工作所が威信をかけて2020年度に全力投入した「ザ・デスク」は、翌年度に早くも大幅なモデルチェンジが施されて現在に至るものの、今やくろがね工作所を代表する学習机となっています。逆に言うと、くろがね工作所には定番と言えるものがないということです。
ともあれ、スリムワゴンとタブレットステーションは現在のくろがね工作所にとってはもっとも「らしい」装備と言えると思います。また、個人的にはマグネットで時間割表などを貼ることができるスチール製のバックパネルは魅力的だと感じるところです。
男子に人気!ヴィンテ3
くろがね工作所の学習机と言えば、男子のブラック系の「クールボーイ」、女子にはホワイト姫系の「キュートガール」でした。しかし、2023年度のカタログからはクールボーイが、2025年度からはキュートガールまでも消えてしまいました。
クールボーイがカタログから消えたのは残念ですが、むしろ「ヴィンテ3」に人気がシフトしたものと考えられます。ヴィンテ3はアイアンフレームにダーク系の木目調合板を組み合わせることで、ヴィンテージテイストを醸し出しています。
2024年度からはすべて別売となり、組み合わせを自由に選べるようになりました。なお、ザ・デスク、キュートガール、ヴィンテ3ともに、現在のくろがね工作所の学習机はスリムワゴンを採用することで足元を広くしているというのが特徴のひとつになっていると言えます。また、2024年度からはほぼリフティングワゴンが消滅しています。
手頃な天然木デスク!「シンプルプラス」
実際に購入したという話はあまり聞かないのですが、2024年度から復活した「シンプルプラス」も人気があるんじゃないかと思っています。調色機能付きのワイドなデスクライトを標準装備した天然木の組み替え式デスクであるにもかかわらず、7万円台からというお手頃価格で購入できるからです。
ホワイト木目色はキュートガールの受け皿になっているようにも思います。
2025年度期待の新作!「リニアミオ」
復活と言えば、2025年度からは天然木デスクの「リニア」もそうです。「リニアミオ」は従来モデルとは少しコンセプトが変わり、ユニットデスクまたはL型デスクとしてレイアウトできるコンポーネントタイプと、拡張天板を幅方向の延長または足元棚などとして組み合わせられるエクステンションタイプの2本立てとなっています。
これは結構くろがねにしては質感が悪くなく、価格も割高さを感じません。個人的には非常に期待しているところです。
LEDデスクライトが割りと優秀
くろがね工作所はLEDデスクライトも割りと優秀です。調色機能搭載で、シェード幅が広く、操作パネルが前面にあって子供でも操作しやすいのは、学習机メーカーではコイズミファニテックの他は大商産業とくろがね工作所くらいですからね。ただし、樹脂製アームなので精度はイマイチ。
くろがね工作所の学習机の品質
もともと私はくろがね工作所の学習机を割りと高く評価していました。手頃な価格帯で、LEDデスクライトも悪くはないですし、子供が喜びそうなデザインを採用しているからです。
しかし、販売員の評判が良くありません。クレームが多い、クレームが起きても対応が悪いという話を聞きます。そのため、くろがねの学習机は扱わない方針の家具店がいくつかあります。また、店頭の展示品を見ても表面材が剥がれているなど、品質管理が行き届いていないのではないかという印象を受けることもしばしばです。
また、私自身、何度かくろがね工作所に問い合わせをしましたが、総じて印象が良くありません。私の場合はもちろんクレームではなく取材ですけど、回答がなかったり遅かったりするのは「社風」なのではないかと思います。もしくは、単純に人手が足りていない可能性もあります。
ほかの学習机メーカーの場合、販売店からの注文に応じてメーカーから都度出荷されるのが一般的ですが、くろがね工作所は一部の大型店ではシーズン前に販売店から一括注文を受けて納品するスタイルのようです。そういう事情から、クレーム対応は販売店任せになり、結果的に販売員が割りを食うことになるのではないでしょうか。
メーカーは作ることに徹し、販売店は顧客対応に徹するということは、ある意味で理想的なことです。その点で言えば、くろがね工作所は何ら間違っていません。
また、くろがね工作所に限らず、オリジナルモデルなどが販売店に一括で納品される場合は、クレーム対応が販売店任せになりがちです。その場合、消費者としては安く買える一方で、販売店がキチンと対応してくれないと困ったことになってしまいます。
つまるところ、決してくろがね工作所だけが悪いわけではありません。しかしながら、販売員すら敬遠するくろがね工作所の学習机は、私としてもオススメし難いというのが率直なところです。
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