堀田木工所は昨年、7月に新年度の学習家具カタログを公開しました。しかし、今年は9月を予定とのことだったので、それを信じて待っていたら、まさかのフライング発行をしてきました。
昨年度、最大約20%の値上げをした堀田木工所。昨今の情勢を見ると更なる値上げは不可避な状況ですが、一体どんな手を打ってきたのでしょうか。カタログを見て参りたいと思います。
2023年度新作「サージュ」
ここ数年、カタログ外モデルを増やす一方で、カタログ掲載モデルは絞ってきた堀田木工所ですが、2022年度に続き、2023年度も新作1モデル純増となりました。新作は「sage」。サゲではなく、サージュです。昨年度発売の「Neige(ネージュ)」に似たネーミングですね。
サージュは商品名こそネージュに似ていますが、コンセプトはまったく違います。サージュの天板は堀田木工所が得意とするアルダー無垢の自然塗装ではなく、なんと強化プリント紙なのです!
とは言え、表面の固さは鉛筆硬度にしてH~2H。たぶん、堀田木工所のUV加工を施した自然塗装と比べたら硬いと思います(ちなみに浜本工芸のUVウレタン塗装で4H相当)。角の貼り合わせ部分さえ気にしなければ木目の見た目も問題ないでしょう。最近の強化プリント紙は突板と見分けがつかないほどですからね。
天板サイズは800×550mm(税込定価42,570円)と1170×550mm(同57,200円)の2サイズです。引出し別売ではあるものの、堀田木工所の他のデスクよりも1~2万円ほど価格帯をサゲたサージュ。果たしてヒットとなるでしょうか。
スクエアシェルフ「タロ」
サージュよりも注目したいのは、昨年度途中に販売開始されたスクエアシェルフの「Talo(タロ)」。表面材が強化プリント紙のくせに税込定価66,000円もしますが、棚板を移動させることでグリッドシェルフのようになり、上写真の通りハンガーラックとして使うこともできます。
奥行約36cmというのは洋服を掛けるにはちょっと浅すぎるようにも思いますけど、ランドセルや絵の具セットなどを収納するには最適なサイズです。また、背板が化粧されているのでパーテーション代わりに使うこともできます。
ベッド「クレイ」
デスクの廃番はなかった一方で、システムベッドの「TRACK(トラック)」が廃番となり、代わりに登場したのが上写真のベッド「Clay(クレイ)」と、もうひとつ「nova(ノーヴァ)」です。
基本的にシステムベッドについては否定的な私からすると、シングルベッドを投入してきたことには拍手を送りたいと思います。ただ、一般的にあまり広くない子供部屋に、クレイのようなヘッドボードの裏面が棚になっているベッドって、果たして需要があるのでしょうか。
ちなみに、カタログの19ページでオススメの家具レイアウトを提案してくれていますが、4畳半で270×270cmの広さがあるという前提で進めるのはいかがかと思います。メーターモジュールならそのくらいの広さはあるでしょうけど、一般的な尺モジュールではもう一回り小さい255×255cmくらい。家具のレイアウトに於いて10cmの差は非常に大きく、だからこそレイアウトが難しいわけです。堀田木工所はそれを承知で敢えてこんな提案をしているのでしょうか。
値上げ率は概ね10%前後
さて、冒頭でも触れた値上げについては、概ね10%前後となりました。ラックやワゴンは15%前後の値上げとなっているものが多いことから、単にアルダ―材の高騰だけではないのか、もしくは戦略的にデスク本体の価格転嫁は抑えたのかもしれません。
本音を言えば、もっと値上げしたいところでしょうが、昨年度に引き続きですからさすがに厳しいのでしょう。ネージュの110cm幅が税込定価で68,970円に対し、浜本工芸の「No.28デスク」の同サイズが71,500円ですからね。値引率がまったく違うとは言え、その値段だったらネージュを買う人はいないと思います。
というわけで、2023年度の堀田木工所はシステムベッドをやめて普通のベッドを投入してきたことが最大の特徴と言えるでしょう。トータルコーディネートの提案で消費者としても子供部屋をまるっとコーディネートできて助かるうえに、メーカーとしても単価アップを図ることができて一石二鳥です。私としても良い取り組みだと思いますが、家具レイアウトの提案が酷く雑だったことだけが残念です。
2年続けての値上げと言っても実売価ではあまり変わっていないように感じられますので、「国産」を武器にすればコイズミファニテックなど大手にとってはますます脅威なのではないでしょうか。昨年度はアクタスの「リーヴェ2」が消えたことによって、「ウインディ」に流れてくるようなこともあったかもしれません。安泰とまでは言えないものの、悪くはないと思います。
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