かつてほどではありませんが、今もって書斎家具売場から外すことができない定番の書斎机があります。それが「ビクター」のワークスタジオです。
わたし個人的にはなぜワークスタジオが売れたのかよく分かりません。ただ強いて言えば、こういうカジュアルっぽくて質感が良さそうに見える国産の書斎机が他になかったからだろうと思います。もしくはビクターという馴染みのあるブランドが、特に富裕層のステレオマニアにとって価値を与えていたのかもしれません。
※この記事は2017年6月10日時点の情報に基づいています(2023年11月28日一部更新)
ビクター→JVCケンウッド→バルバーニ
しかし、そのビクターのブランドももう使えなくなってしまいました。2017年5月にJVCケンウッド・インテリアが保有していた資産と営業権を静岡県を地盤とする川島グループに譲渡し、「バルバーニ」という会社で運営していくこととなったからです。
そもそもビクターの書斎机は日本ビクターのインテリア事業としてスタートし、2011年に日本ビクターがJVCケンウッドと合併、その後、ビクター・インテリアはJVCケンウッド・インテリアとなりました。それでも、カーナビやAV機器ではビクターブランドは基本的に使われなくなった一方で、書斎机などではビクターブランドが引き続き使われてきました。
しかしながら、JVCケンウッドの資本から外れて別会社となればそうもいきません。川島グループというのはJVCケンウッド・インテリアの工場がある静岡県を地盤とする地元の有力企業グループで、主に非鉄金属を扱いながらも、自動車のホイールの販売やゴルフ場の運営など多角的に経営しています。
正直、ちょっと胡散臭い会社かなと思ったんですけど、調べてみると年商700億円の巨大企業グループ。しかも、私の父親が使っている電動カートが川島グループの関連会社の商品と知り、ちょっと驚いた次第です。
商品ラインナップは縮小?
2016年度に投入された学習机「ワークスタジオJ」は継続となるようですが、「ニューワークスタジオFLAT」など一部商品については既に生産を中止し、今後はラインナップを縮小するようにも見えます。もっとも、一旦リストラを進めたうえで収益が安定すれば再び拡大路線に転換するのかもしれませんが、当面は少なくとも学習机市場では活躍の機会が少ないのではないかと思います。
2015年の『家具企業便覧』(家具新聞社)を参照すると、JVCケンウッド・インテリアの売上は6億6千万円、従業員数は51名となっています。しかしこれは家具メーカーとしては売上の割りに従業員数が多すぎます。売上を倍にするか、従業員を半分にするかしないと追いつきません。家具業界では異質と言われた大塚グループの大塚家具製造販売でももっとバランスが取れていましたから、JVCケンウッド・インテリアは明らかに大企業体質であったと思われます。
つまるところ、バルバーニには迅速に経営体制を整えることが求められているはずです。しかし、ビクター時代に家具販売店で営業マンの姿をほとんど見なかった会社が、営業力を落とすことなく現状を維持することは困難で、なかなか先行きが厳しいと感じます。
ビクターブランドという神通力が通用しなくなる今後、バルバーニはどのように盛り上げていくのでしょうか。普通に考えれば無理だろうと思うんですけど、大方の予測に反して成長し、家具業界に明るい話題を届けてくれればと願っております。
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