最近はポンコツAIのゴリ推しによって検索サイトが使い物にならなくなりました。「学習机 おすすめ」というキーワードで調べてみると、上位のキュレーションサイト(まとめサイト)からの抜粋で「天板の高さを調節できるデスクがおすすめ」などと出てくるのです。
でも、そのサイトを見ても天板昇降デスクなんて出てこないんですよ。当たり前です。中華を除いて最近は天板昇降デスクはマイナーな存在だからです。おおよそそのキュレーションサイト自体、過去にライターが寄せ集めてきた情報を使い回して、何年も掛けてボリュームを膨らませてきただけなのでしょう。
天板昇降デスクが流行ったのは一昔前の話です。私が子供の頃(1980年代)はコクヨの「くるくるメカ」、2000年代はオカムラの「ピエルナ」やベネッセ×カリモク家具の「学びデスク」が流行りましたが、最近は減る一方です。とうとう堀田木工所の「ムービー」も消えてしまいました。
とは言え、これはあくまで流行であって、天板昇降デスクそのものが悪いわけではありません。選択肢が少ないからこそ、天板昇降デスクを探している方もいらっしゃることでしょう。というわけで今回は、天板昇降式デスクのメリットとデメリットを整理したうえで、候補となる商品をピックアップしたいと思います。
※この記事は2024年6月8日時点の情報に基づいています
天板昇降デスクのメリット&デメリット
メリット
- 天板を低くできるので新入学児童でも座りやすい
- 子供の成長に合わせて天板の高さを変えることができる
- 天板を低くした場合に圧迫感が少なくリビングに置くのに最適
- 最初は上棚あり、天板アップで上棚がなくなる合理的なものも
まずは天板昇降デスクのメリットから。まず第一に、天板を低くすることで子供の足が床にべったりと着き、安心して机に向かうことができます。足置きなどなくても足がブラブラせず、勉強などに集中しやすいというわけですね。
そして、子供の成長とともに天板の高さを上げていくことで、常に足が床に着く高さを維持することができます。最終的には大人が使う机と同じ天板高になるため、幼児から大人まで長く使うことができます。
見た目の面でもメリットがあります。特にリビングダイニングに置く場合、一般的なデスクだとダイニングテーブルとさほど変わらない大きさと高さで圧迫感を感じやすくなります。かと言って、幅や奥行をコンパクトにすると、のびのびとお絵描きや勉強ができません。天板昇降デスクなら高さを下げることで圧迫感を抑えることができるのです。
一昔前は上棚付きの学習机を買っても子供が成長すると上棚を外してしまうと言われることがありました。上棚があると子供っぽく見えるだけでなく、教科書類を広げるのに狭く感じられるからです。その点、天板昇降デスクは天板を下げることで本立てが出現し、天板を上げると本立てが消滅するものもあります。
デメリット
- 専用の椅子が必要
- 天板を昇降する際の組み替えが大変
- ワゴンが小さくて収納量が少ない
- メリットを実感できるのが短期間
一方で、天板昇降デスクにはデメリットも存在します。まず、天板昇降デスクには専用の椅子が必要です。一般的な学習椅子では下げられない座面高まで下げる必要があるからです。もっとも、天板昇降デスク専用の椅子は大人でも使える座面高になりますから、その点は心配無用です。
天板昇降デスクが流行ってはブームが終わるのを繰り返すのは、天板の高さを調節するために組み替えるのが大変なことがひとつの原因と考えられます。また、コクヨのくるくるメカのように天板高を変えるのが簡単であっても、その必要があるのは主に小学校低学年の間だけで非常に短期間であるため、メリットがあまり感じられないというのも一因と思われます。
その一時期に対応するためにワゴンの高さを低くせざるを得ないということが、以前に私が天板昇降デスクを否定的に捉えていた理由のひとつです。ただし、近年は予算を抑えるためにワゴンを買わない、もしくは子供が成長してから買い足すというケースも増えています。そういうプランであれば、ワゴンが小さいという問題は生じないでしょう。
現在販売中の天板昇降デスク
浜本工芸・No.17デスク
現在、もっともメジャーな天板昇降式デスクは浜本工芸の「No.17デスク」です。天板はナラ無垢、引出しは婚礼箪笥のように開閉がスムーズで、最高級の天板昇降デスクと言えます。天板を低くしたときは本立てがあり、天板を上げたときは仕切り板を足元棚に移動して使うことができるので合理的です。
最初から引出し1段の移動袖をセットするのも良し、途中から昇降袖などを買い足すことができるのもメリットと言えるでしょう。
三栄コーポレーション・フォルミオ
ピエルナや学びデスクが人気だった頃、同様に高い人気を誇っていたのが三栄コーポレーションの「フォルミオ」です。一時は廃番に追い込まれましたが、2021年から日本製に切り替えて復活しています。
フォルミオは有孔ボードの側板が天板の高さを決めるネジ穴として機能しているだけでなく、それ自体がデザインになっている点が秀逸です。また、当時はまだ珍しかったリノリウムを天板に採用している点も魅力的でした。以前はとても割高に感じられましたが、現在は相対的に少し手頃に感じられるようにも思います。
杉工場・MUCMOC
杉工場の「MUCMOC(ムックモック)」はフォルミオを彷彿とさせるデザインの天板昇降デスクです。ただし、カラーパネルはリノリウムではなくポリ合板です。また、デスクの幅は94cmでフォルミオよりもコンパクトです。天板はアルダー無垢のオイル仕上げでキズや汚れの心配もあります。
それよりも横揺れが生じやすいのがネックです。また、最低天板高が58cm以上で未就学児では床に足が着きにくいかもしれません。価格は手頃に感じられるかもしれませんが、正直あまりオススメできる感じではないです。
キシル・nvovoデスクK100
XYL(キシル)の「nvovoデスクK100」は天板を昇降できるだけでなく、約10度の傾斜を持たせた状態で組み上げることも可能です。主材はオイル塗装を施した国産ヒノキ無垢ながら、天板にはリノリウムを採用しています。
キシルと言えば以前は2本脚の天板昇降デスクが主力でしたが廃番となり、ラインナップも大幅に変わってしまっています。
ヒノキクラフト・MOCUEデスク
ヒノキクラフトの「MOCUEデスク」はフォルミオと学びデスクを足して2で割ったような形状の天板昇降デスクです。同じく静岡県に本社を構えるキシルと同様に、主材はオイル塗装の国産ヒノキ無垢、引出内部材はスギ無垢を使用しています。
ヒノキクラフトでは他にも天板昇降デスクがありますが、ついつい余計なことを言ってしまうのでこれ以上のコメントは控えたいと思います(苦笑)
一生紀・ステップ
一生紀(いっせいき)の「STEP(ステップ)」もオイル塗装を施したアルダー無垢のデスクです。こちらは日本製ではなくベトナム製なので価格が手頃。ただし、天板をもっとも下げたときにワゴンが机の下に収まりません。また、ステップ専用のチェアというのが見当たらないのも困ったところです。
マナベIH・ゲイル
マナベインテリアハーツの「ゲイル」は中国製で、天板はウレタン塗装の天然木突板です。カラーにより、オーク、ウォルナット、カバを使用しています。
ゲイルは天板の昇降に関わらず常に本立てと足元棚がある状態をキープできるのが特徴のひとつです。価格も手頃で現実的な選択肢のひとつと言えるのではないかと思います。
天板を低くしたときにワゴンが下に収まらないなんて馬鹿なこともありませんし、専用のチェアも用意されています。ただし、天板高も座面高も未就学児が使うには高すぎると感じます。小学生以上向けと言えるでしょう。
IKEA・ベリレルカ
海外で学習机と言うとむしろ天板昇降デスクが一般的です。そんなわけで、IKEA(イケア)には天板昇降デスクがたくさんあります。
「BERGLÄRKA(ベリレルカ)」はハンドルを回すことで天板を昇降させることができます。また、天板の一部を3段階で傾斜できるようになっています。上棚は収納力があるだけでなく、スチール製の有孔ボードのところに「SKÅDIS(スコーディス)」のパーツやマグネット収納が可能です。機能的には魅力的ながら、前後に揺れるところがマイナス評価となっています。
IKEA・ピプレールカ
多機能なベリレルカに対し、「PIPLÄRKA(ピプレールカ)」は機能とサイズを絞り込んだ廉価モデルと言えます。天板の昇降は組み替えが必要で、傾斜天板はつっかえ棒を用いた完全アナログ方式。天板サイズはベリレルカが幅100cmまたは120cm×奥行70cmですが、ピプレールカは80×63cmとコンパクトです。
なお、ベリレルカは前後に揺れますが、ピプレールカは左右に揺れます。IKEAってやっぱり楽しいですね!
IKEA・ポール
IKEAの「PÅHL(ポール)」も天板昇降デスクですが、天板高は59cmから72cmの3段階調節のため未就学児用と言うよりは小学生以降向けで、メリットは感じにくいと思われます。上棚なしも選択できて、構造的にはとてもシンプルです。
かと言ってさほど安さを感じられるわけではなく、個人的には「LINNMON(リンモン)」の天板に「OLOV(オーロヴ)」の伸縮脚を組み合わせたほうがシンプルで良いんじゃないかと思います。ニトリの「プレフェ」でも良いでしょう。
IKEA・レラテラ
IKEAの「RELATERA(レラテラ)」は最近発売されたばかりの新商品です。私もまだ実物を拝めていません。
レラテラは天板昇降デスクと言っても未就学児向けではなく、天板高が65cmから108cmに調節可能なスタンディングデスク寄りの設計です。テレワークもしくは書斎用といった趣が強いでしょうか。そういった用途の天板昇降デスクはIKEAにも他にいくつかあります。
コイズミファニテック・アルテージ
コイズミファニテックの「アルテージ」も天板を昇降可能なスタンディングデスクです。こちらは電源を用いた自動昇降で、天板高63~128cmに対応します。ホワイトオーク突板の天板を用いており、質感は上々。ただし、価格も立派です。L型デスクもあります。
以上、天板昇降デスクを12台ご紹介しました。ただし、最後の2モデル(IKEA・レラテラ、コイズミ・アルテージ)は学習机と言うよりもスタンディングデスクです。杉工場のMUCMOC、マナベのゲイル、IKEAのポールは小学生以降を旨とした最低天板高で、天板を昇降できるメリットを実感できる期間が短いと思います。子供の成長はあっと言う間ですからね。
そうすると実質的に残るのは、浜本工芸のNo.17デスク、三栄のフォルミオ、一生紀のステップ、IKEAのベリレルカとピプレールカくらいでしょう。個人的にはずっと使う前提ならNo.17デスク、使い捨てで良しとするならベリレルカかなと思います。
コメント 皆様からご質問・ご意見など
初めまして。ハヤシと申します。
来年、娘が小学校入学のため、収納マンさんのブログを興味深く拝読しています。ちょっと辛口なコメントも表現が面白くてクスッと笑ってしまいます(笑)。
さて、我が家は60㎡の大変コンパクトなマンションに住んでおり、圧迫感の少ない天板昇降デスクを検討しています。
そこで上記にあるコイズミファニテックのBEENOについて質問があります。よろしくお願いいたします。
こちらの机、高さが変えられるのは天板のみで、後ろの板(本棚?の部分)は変えられないのですよね。全体的に下げられるわけではないということになると思います。
その場合、高さのある机とさほど印象が変わらないのでは?と思うのですが、メリットに挙げられている圧迫感が少ない点は活かされるのでしょうか?
また、天板昇降デスクが下火になっている理由を教えていただきたいです(既に記載済みでしたら申し訳ありません。)
これから実際に見に行く予定ですが、ご意見を聞かせていただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
ハヤシさま
はじめまして^^
ビーノの昇降デスク、まだ店頭に並んでいますか?
楽天市場でももう扱っているところはないようです。
ここから先の文脈は…すいません、お察しください^^;
ビーノの昇降デスクは背板が固定されているため、天板の上に本立てが乗った状態で昇降するかたちになります。
天板を下げた状態ではもちろん圧迫感は少なくなりますが、背板や側板を集中力アップのための衝立と見るか、圧迫感のあるものと見るかは意見の分かれるところでしょう。
なお、一番上に上げた場合は平机に近い印象となります。
天板昇降式デスクの人気がなくなってきているのは、いろんな要因が考えられます。
まず、コクヨのくるくるメカのようにブームが一巡したと考えられます。良い悪いという問題ではなく、ただの流行だったということですね。
あと、かねてより私が指摘していたように、本格的に学習する時期のことよりも小学校低学年にスポットを当ててしまっているために、その後に弊害が生じる可能性があるということです。
具体的に言うと、ワゴンの収納量が少なくなってしまうということですね。
また、圧迫感を低減するという目的で言えば、天板を低くすることのほかに奥行を浅くするという手法が考えられます。
最近は奥行の浅いデスクが増え、人気がそちらにシフトしていると言えます。
さらに付け加えると、余分な機能がないシンプルなものが好まれる傾向が強くなっています。
いかにも学習机という感じではなく、大人が使うような普通のデスクという感じのものが好まれるようになってきているのですね。
その点で天板昇降式デスクは、ワゴンが小さいこともあって、ちょっと違う感じになってしまいます。
2017年度も天板昇降式デスクを扱うことが分かっているのは、浜本工芸、ベネッセ&カリモク家具、杉工場、堀田木工所、キシル、オカムラくらいですかねー。
基本的に小ロットの木工メーカーは生産が継続できるものの、ピエルナが主力のオカムラ以外は生産を続けるのが難しい状況です。
私も決して天板昇降式デスクがダメというつもりはなく、選択肢としては残しておきたいのですが…。
ハヤシです。返信ありがとうございます。
BEENOの昇降デスクですが、近くのホームセンターに問い合わせたところ、展示なしとのことでした。
学習机の新モデルが出てくるのが秋頃だということを知らずに先走ってしまいました。ランドセルと同じ感覚でいたので…。収納マンさんのブログにもスケジュールの目安が記載してあったのに、見落としてしまってすみませんでした。
背板がズラせなくても天板が低ければ圧迫感は軽減できるのですね。よくわかりました。個人的に、足が床に付くタイプの机や椅子が良いと思っていたので、天板昇降デスクに注目していたんです。娘は足置きがあってもしっかり足を置かずに変な姿勢になってしまうことがあるので。しかし天板昇降デスクがそんなにも下火になっているとは…。一般的な高さの学習机も選択肢に入れようと思います。
そして天板昇降デスクは学年が上がるにつれて、収納が足りなくなってしまうんですね。そこまで先のことも考えて選んでいかなければいけませんね。
これからも参考にさせていただきます。ありがとうございました!!
ハヤシさま
ビーノの昇降デスクはもともと展示しているお店が少なかったので、仮にシーズン中であってもそのチャンスは少なかったと思います。
2016年度の最後は処分価格だったので、あるところにはあるかもしれませんが。
もしご希望の場合は、ナフコや島忠ホームズなどの大手のホームセンター系ではなく、地域の中堅家具店を狙っていただいたほうが良いと思います。
学習机はまずお子さんが安心して机に向かえることも大事です。
その点で言えばもちろん天板昇降デスクがダメということはまったくありません。
お子さん自身や将来の収納力などトータルで考えてご検討いただければと思います^^