
これからお子様の小学校入学や進学を控えて、学習机を購入する予定がない場合は特に、ランドセルや教科書類を収納するのために「学校用ラック」や「ランドセルラック」と呼ばれるものを購入することを検討されている方もいらっしゃると思います。
モノをきちんと片づけるには定位置を決めることが大切です。また、片づける場所が細かく決められていたら片づけやすいに違いないと思われることでしょう。そのため、専用品である学校用ラックなどはとても魅力的に映ります。
しかし、収納のプロとしてたくさんのお宅を拝見してきた私の立場から申しますと、学校用ラックなどはNo Goodです。使いこなせず、かと言って処分できないまま放置しているお宅がたくさんあります。
今回はなぜ学校用ラックなどがNGなのか、また代わりにどういった収納家具を選べば良いかについてお話ししたいと思います。
※この記事は2025年3月19日にリライトしたものです
学校用ラックってこんな感じ
学校用ラックやランドセルラックと言ってもピンと来ない方もいらっしゃると思います。私がNGだと思うのは上写真のような商品です。
NGポイントは主に3つあります。順番に説明して参りましょう。
細かく仕切られたトレー
このようなラックが良くないと言える最大のポイントは細かく仕切られたトレーです。購入する方にとっては最大の魅力なのですが、収納のプロに言わせるとまったく逆なのですね。
先ほども少し触れた通り、モノは定位置を決めて収納するのが基本です。しかし一方で、その位置を決めるのが苦手とおっしゃる方が少なくありません。
細かく仕切られたトレーがあると、算数、国語、生活…という具合に、教科ごとに分けて収納するイメージがしやすいと思います。実際、最初はそれで上手くいくのですが、たとえば算数だけプリントが多かったり、生活の資料集などが増えたりすると、トレーに収まり切らないモノが出てきます。そうすると、結局また定位置を考え直さなければならなかったり、2ヶ所以上に分散してしまって片づけにくい状況を作り出してしまうわけです。
融通の利かない収納スペース
こちらのラックには上段にピアニカを置くのに最適な収納スペースがあります。ピアニカは幅が広く、高さは低いので、収納しにくいものです。そのため、このような専用のスペースが設けられていると助かります。
一方で、ピアニカを使う期間は限られています。ピアニカを使わなくなれば、ほかに何を収めれば良いのか分からないスペースになり、プリントや画用紙を突っ込んで放置しがちです。ピアニカに限らず、何かを収めるのに最適化されたスペースは、それが不要になった途端に使いにくい場所になります。
価格の割りに耐久性が不十分
一昔前はダンボール製のランドセルラックでも1万円くらいするということが少なくありませんでした。その点、こちらはMDF合板でできていて2万円強ですから、悪くないと言えるのかもしれません。ですが、今は同じ予算を出せばもっと良いものがいくつもあります。
MDFは家具用材として一般的なので、それ自体は決して悪くありません。しかし、たとえばこの引出しはMDFの板の辺の部分を接着しているだけですから、少し高いところから落とせば壊れてバラバラになってしまうことがあります。また、スライドレールが付いていないのでスムーズに開閉できません。引出しストッパーも付いていないんじゃないでしょうか。
いくら日本製で丁寧に作られていたとしても、構造的に耐久性があるとは言えず、安全性にも疑問があり、おまけに見た目もチープです。
おすすめのランドセルラック
では、同等のサイズでランドセルラックを買うならどんなものが良いのでしょうか。一時はランドセルラックを積極的に展開していた大手学習机メーカーもここ数年でラインナップを減らしてしまったので、選択肢は少なくなっています。しかしながら、冒頭の商品よりも良いものは少ないながらもいくつかあります。
以下、おすすめできるランドセルラックをピックアップしたいと思います。
家具の里/リッケ・ランドセルラック
私がオススメしていたコイズミファニテックのマルチラック(旧・Sラック)は2024年度を最後にすべて販売を終了してしまったので、今もっともオススメできるものを挙げるとしたら家具の里×堀田木工所の「リッケ・ランドセルラック」でしょう。国産の完成品、引出前板にアルダー無垢材を使っており、価格は税込35,000円です。
冒頭のラックと比較すると1万円も高いですが、ピアニカが収まっているところの上の棚板は可動式となっており、ピアニカが不要になっても様々なモノを収納しやすい収納スペースになります。また、その下の棚板も可動式で、すべて縦方向に仕切ることもできます。引出しは四方囲い構造でシッカリしているだけでなく、フルスライドレール付きで重いモノを収めてもスムーズに開閉できます。もちろん、意図せず引出しが外れるようなこともありません。
キャスター付きで移動も可能。背面は化粧されているので、移動させても見苦しくありません。コード孔が設けられており、プリンターラックなどとしても使用可能なロングライフ設計です。なお、こちらは幅55cmですが、幅43cmのスリムタイプもあります。
コイズミファニテック/ルトラ・マルチラック
コイズミファニテックの「ルトラ・マルチラック」も悪くないと思います。こちらは棚板が全て可動式になっており、ほぼ本棚のように使うこともできます。ブックエンドは可動式なので教科ごとに分ける場合もバランスを調整可能です。ブックエンドは取り外してしまうこともできます。
引出しはもちろん四方囲いで頑丈。フルスライドレール付きですからスムーズに開閉できます。タイ製で価格は概ね3万円台となります。
リビンズ/TRYランドセルラック
あくまで冒頭のラックと同程度の価格で探すなら、リビンズの学習家具ブランド「キヅク」の「TRY(トライ)ランドセルラック」はいかがでしょうか。A(アルダー)、P(パイン)、R(ラバーウッド)の3タイプがあり、価格はいずれも税込24,800円です。
残念ながら、こちらはすべて固定棚です。また、ブックエンドもすべて固定式。一方で、引出しは木桟が付いており、それなりにスムーズに開閉可能です。ストッパーも付いているので、抜け落ちて足を怪我するようなこともありません。
なお、イトーキにも同様のお片付けラックがありますが、いずれも在庫限りと思われます。
堀田木工所/OED2104 60ラック
移動させる必要がなければ、堀田木工所の「OED2104 60ラック」はオススメできると思います。中段を除き可動棚となっているので、すべての段にA4ファイルを収納することも可能です。
国産、完成品で、税込19,900円。シンプルなので他の場所でも使い回しできると思います。奥行がちょっと浅いのでランドセルは横向きに収納する必要がありますが、見た目は申し分ないでしょう。
ニトリ/Nクリック ディープ ボックス
先ほどのラックを見て、「じゃあカラーボックスで良いんじゃないの?」と思われた方もいらっしゃると思います。まったくその通りです。
ただ、昔ながらの3段カラーボックスは棚板が固定されているため、大きさの異なる教科書などを収納するには不向きです。また、ランドセルを置くなら奥行は35cm以上欲しいところです。
ニトリの「Nクリック ディープ ボックス」なら棚板を動かすことができ、奥行は約40cmあるのでランドセルを置くにも十分です。おまけにネジ不要で組み立て簡単。また、表面材に強化プリント紙を使っているので、見た目も従来品より美しいです。
サイズ違いはもちろん、追加棚板、キャスター、脚、連結パーツなど、オプションパーツも豊富。引出しが欲しい場合は「引出 Nインボックス A4 奥深 3段」などを組み合わせていただくと良いでしょう。
コスパに優れるとともに、ランドセルラックとして使わなくなったあとも様々な用途で使うことができます。
オープンラックはもっとオススメ

カラーボックスのようなものも良いのですが、個人的には無印良品の「パイン材ユニットシェルフ」などの背が高いオープンラックをより推奨したいところです。
背が高い収納家具は、圧迫感が強いとか、地震が起きたら心配といった声もあろうかと思います。しかし、背の低い家具をいくつも並べるより、床が見える面積が増えて部屋を広く見せることができますし、転倒防止具を併用することで有事の不安を解消することもできます。
お子さんが小さい間は上のほうに親のモノを収納することで、スペースを効率良く使うことが可能です。お子さんが成長して十分に手が届くようになる頃には、身の回りのモノが増えても収納スペースを確保しやすいでしょう。シンプルだからこそ、別の場所での転用もしやすいです。
スチールユニットシェルフやステンレスユニットシェルフのほか、ニトリの「Nポルダ」シリーズを選ぶのも良いでしょう。選択肢は豊富ですし、価格も手頃です。是非ご検討ください。
以上、私がなぜ学校用ラックなどを否定的に見る一方で、オープンラックなどのシンプルな収納家具をオススメするかご理解いただけたでしょうか。
実のところ、学校用ラックはよく売れます。教科ごとに定位置が決まっているほうが片づけやすいと誤解している方が多いからです。
しかし、たくさんのお宅を片づけた実績を持つ本当の収納のプロで、このように細かく仕分けることを推奨する方は少なくとも私は見たことがありません。定位置を決めることは確かに大切ですが、極端に言うと教科がゴチャ混ぜでも棚一段ないし二段にまとまっていればそれで良いのです。細かく分けすぎると、モノが増えるたびに対処する必要があり、維持管理が大変なのです。
また、モノは細かく分ければ分けるほど出し入れしやすくなる一方で、ゆとりスペースが必要になります。小学校1~2年生の間って、授業はほとんど国語と算数ばかりで、ランドセルから出して片づける必要ってほとんどないんですよ。また、学校用ラックがあればプリントを分類するのに便利そうに見えますが、結局それをチェックするのは親ですから、片づけが苦手な人の場合はプリントを突っ込んだままになりがちで、理想と現実のギャップが広がっていきます。
ですから、モノを細かく分けるのは本当に細かく分ける必要性を感じるものにとどめておかなくてはなりません。そうしないと、管理の煩わしさが増すばかりで、分けるメリットはなくなってしまいます。
学校用ラックは小学校低学年の間はランドセル置き場としか機能せず、小学校を卒業した後は使い道がなくなってしまいます。それなのにモノの割りに高価で、コストパフォーマンスがあまりにも低いと言わざるを得ません。
それなら汎用性の高いオープンラックを置いたほうが、長く使うことができてコストパフォーマンスが高いと私は思います。逆に、どうしてもランドセルラックが必要だと考えるのであれば、小学校6年間使ったら使い捨てにしても良いと割り切るのが良いでしょう。つまるところ、ニトリのカラボで十分です。
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コメント 皆様からご質問・ご意見など
ご紹介いただきましたニーズの代表取締役の者です。
確かに弊社は従業員8人の小さな町工場で「得体のしれないメーカー」の自覚は十分にあります。TVCMしてる訳でもなく、実店舗があるわけでもありませんしね。一般の方が弊社の名前を知っていたら逆に驚いてしまいます。
しかし、「家具のプロ」を名乗る方に「得体のしれないメーカー」と呼ばれると結構くるものがありますなぁ。
ちなみに、弊社は静岡県浜松市にある会社で、現在のランドセルラックと呼ばれるような、リビングで使うランドセルや学校用品などを収納する木製のラックを始めて開発して販売した会社です。
私も木製品を製造販売して生計を立てている身ですので、家具のプロ()としてこの記事を見た一般の方が受ける印象を考えると、ちょっとコメントを残したいと思いましたが、どうせこのコメントは承認されないと思いますので、管理者の方にどうしても伝えたい事だけ書いておきます。
確かにMDFは天然木に比べてチープな素材ですが、家具のプロの方ならこの商品の原価計算ができますか?このサイズの商品を配送するのにかかるコストはわかりますよね?
あなたが「家具のプロから見て、これはあまりにも高いと言わざるを得ません」と感じる理由は他の要因ですよね?
それって、ここ数年状況が一変した内容に大きく関わってくるんじゃないですか?
まぁ商売として記事を書いているのでしょうから、わかった上での事でしょうが、、、
私も自社の製品を売り込みながら自分の家の家具は全部ニトリで買っていますし。
めちゃくちゃ気分悪くて色々書きたいけど、まぁいいや。
時間の無駄ですよね。
「学用品はあまり細かく分類するメリットがない」
この内容には激しく同意します。すばらしい分析だと思います。
書かれている内容、まさにその通りだと思いますし、すごく参考になります。
私も娘に自社のランドセルラックを持って帰って使わせましたが、20歳超えた今でも家に置いてあって邪魔でしょうがない、、、
捨てるのもめんどくさいし、いざ捨てようと思っても思い出もあってなかなか捨てられなくて困っています。
あの当時かわいかった娘が引出しの中に色々詰め込んでたんだよな、、、
得体の知れないメーカーの社長さま
このたびは私が書いたことでご気分を害されたとのこと、お詫び申し上げます。
御社のことを得体の知れないメーカーと書いたつもりはありませんでした。
冒頭で御社の名前を出しつつ、2015年当時のことを書いているわけですから、当然、別の会社を指したつもりです。
ですが、当事者がそのように感じられたのは事実ですから、配慮が足りなかったと反省しております。
原価計算云々については、僭越ながら、そういうロジックは既に通じないことは貴殿のほうがよくご存知だと思います。
確かに昔は販売店のバイヤーから「これはサブロクで作っているのか、ヨンパチなのか?」と言われるようなこともありました。
コストを積み上げたうえに粗利を乗せて売価を設定する慣習があったわけです。
しかし、今は「売価いくら?粗利50でいけるなら持ってきて。できなきゃ帰れ。」ですよね。
メーカーとしてはいかに原価を抑えつつリーズナブルに見える商品を作るか、売価が高くても消費者が買ってくれる商品を作るかが重要になってきます。
御社製品はまさしく後者で、素晴らしいことだと思います。
ともあれ、私としては決して御社製品を貶める意図はございませんでした。
ですが、いま見ると、いろいろと端折りすぎて誤解を生じる文章であったことは間違いないと考えております。
よって、早急に御社の名前を出さないかたちで、記事を書き改める予定です。
なお、いただいたコメントはいったん公開させていただきますが、不本意でしたら削除させていただきます。
コメントを承認制にしているのは主に海外からのスパムコメントを防ぐためで、私の不勉強や人間としての至らなさなどをご指摘くださる内容もすべて公開(承認)させていただくのが基本です。
穴があったら入りたいと感じるような恥ずかしいこともありますが、そういうことが起こる覚悟で日々記事を書いております。
このたびは誠に申し訳ございませんでした。
重ねてお詫び申し上げます。
丁寧な返信ありがとうございました。
得体のしれないメーカーは弊社の事を指して書かれていたわけではないのですね。
誤解してしまい申し訳ありませんでした。
記事もコメントもこのままでも全然かまいませんよ!
他の記事もいくつか読ませて頂きましたが、非常にするどい視点で分析、アドバイスをされていて多くの人の参考になっているすばらしいサイトだと思います。
特に過去モデルとの比較など、通常では知りえない貴重な情報を知ることができてとても参考になります。
個人的には読むだけでも楽しく読めますし、商売的にも参考になる情報がたくさん掲載されていて大変ありがたいサイトです。
個人的にはこうしたやりとりもむしろ楽しんで読める性格なので、このまま残していただいてもかまいませんし、修正、非表示、削除など管理人様におまかせいたします。
これからも自由な視点、自由な発言で多くの人の参考になる情報を提供していっていただきたいと思っております。
得体の知れないメーカーの社長さま
寛大なお言葉をいただき、至極恐縮でございます。
今後はどちら様にもご不快の念を与えないように十分に配慮するよう徹底して参ります。
当ブログについて、お褒めくださいましてありがとうございます。
あくまで消費者目線のため、メーカーの方からすると不満を感じられたり、クレームをいただくこともあります。
一方で、およそ一般の方からするとまったく目に留まる機会のない商品を取り上げることで、メーカーや販売店に喜んでいただけることもあります。
次に御社製品を取り上げさせていただくときは、ぜひ後者のかたちで紹介させていただきたいと思います。
恥ずかしながら、御社がランドセルラックのパイオニアとは存じ上げませんでした。
一朝一夕には真似できないノウハウをお持ちのことと思いますので、今後も素晴らしい商品を発売されることを期待しております!