少子化やライフスタイルの変化に伴い、学習机市場も過渡期を迎えていると感じます。
第二次ベビーブーム(1971~74年)に200万人を超えていた出生数も、2023年はその1/3に近い72万人台となりました(出典:厚生労働省)。また、小学校入学時に学習机を買うのが当たり前だったのが、小学校中学年以降に購入するケースも増えています。
こうなって来ると、学習机メーカーは新入学児童をターゲットに商品を開発し続けるわけにはいきません。中学生や高校生を見据えたデザイン、もっと言えば大人をターゲットにするほうが見込み客が多くなります。
しかし、いくら理屈で分かっていても現実にそれにキャッチアップしていくというのは簡単なことではないです。カラーデスクで強みを持っていたくろがね工作所も決して指をくわえて眺めていたわけではなく、シンプルな天然木デスクをラインナップに加えたり、学習机を再定義するなどして、ラインナップの最適化を図ってきました。
ですが、2025年度はようやく、くろがね工作所らしさの光る、大人にもウケそうなデスクが投入されました。先日発行されたばかりの2025年度カタログから紹介して参りたいと思います。
※この記事は2024年11月27日時点の情報に基づいています
「じぶん好み」がコンセプト!リニアミオ
2025年度のくろがね工作所には新作デスクが2つあります。ひとつは「LineareMio(リニアミオ)」。2022年度までカタログに掲載されていた「リニア」(当時はリニアプレミアム)のブランドが復活したかたちです。
リニアミオは以前のリニアシリーズと同様に天然木を使ったシンプルなデスクという点は継承しているものの、いくつかの点で大きくリニューアルされています。
補助天板で「じぶん好み」に

出典:PR TIMES
リニアミオには2タイプのデスクがラインナップされており、そのうちのひとつ「エクステンションタイプ」は付属の補助天板を活用することで、幅900mmから最大1300mmまで拡張することができます。また、補助天板を上写真のように、足元、天板下、デスク側面外側に取り付けることで、「じぶん好み」に使い勝手をアレンジすることも可能です。
このようなギミックを備えたデスクはこれまでほとんど見たことがありません。なので、学習机として検討した場合は、どのように使いこなせば良いのか戸惑う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、このデスクをテレワーク用と見れば、足元に取り付けた補助天板に手提げバッグやファイルボックスを置いたり、天板下にセットした補助天板にノートパソコンやタブレット端末を収納するなど、使い勝手がイメージしやすいのではないかと思います。
なお、エクステンションタイプのデスクの奥行は450mmとコンパクト。別売のモニター台をセットすることもできます。
コンポーネントタイプも
エクステンションタイプは目玉商品として面白いと思うのですが、個人的にはもうひとつの「コンポーネントタイプ」のデスクに注目しています。こちらは幅1000mmと1200mmの2サイズが用意されており、いずれも奥行は550mmです。
上写真にセットされているシェルフ(書棚ロータイプ)の幅は900mm。従来、くろがね工作所のコンポーネントデスク(組み替え式デスク)と言えばデスクの幅と同じ書棚が一般的でしたが、幅1000mm、幅1200mmのいずれに対しても900mmというサイズは小さく、基本的に上写真のようにL型レイアウトで使用することを想定しているものと思われます。
こういうことができるのはカリモク家具の「ユーティリティプラス」などがありますが、コイズミファニテックの「ビーノ」にはできない組み合わせです。デスクはビーノよりも奥行が浅い550mmということもあり、住み分けが期待できると思います。
価格が割りとお手頃
リニアミオは2色展開で、それぞれホワイトオークまたはウォールナットの突板を使用しています。くろがね工作所のデスクはMDFダイレクトプリントのものが多く、それに比べると価格が高くなりがちですが、たとえばキャビネット(ワゴン)の価格を「ザ・デスク(KSDC-24)」と比較すると1割しか変わりません。
リニアミオの100デスク+キャビネット+ローシェルフの3点セットで実売価は税込90,200円(くろがねっと楽天市場店の場合)。決して安くはないものの、組み替え式デスクはL字レイアウトにすることが多く、上棚は無くても良いと考える方もいらっしゃることから、これはこれでアリなんじゃないかなと思ったりします。
ただし、天板アルダー無垢でLEDデスクライト付きの「シンプルプラス」が税込89,800円で買えることを考えると悩ましいところでもあります。
「ザ・デスク」にコンポーネント登場
近年くろがね工作所の売れ筋デスクとなっている「ザ・デスク」にコンポーネントタイプ(組み替え式デスク)が登場しました。その名も「ザ・デスクCD」。こちらの”CD”はコイズミファニテックの”カラーデスク”ではなく”コンポーネントデスク”の略と思われます。
コンポーネントタイプは従来のベーシックタイプと同様に、上棚にマグネット収納ができるスチールパネルが付くとともに、キャビネット(ワゴン)は別売、カラー2色展開です。一方で、上棚ミドルハイ、上棚を含む書棚は分離可能、デスクライト&コンセントボックス付きなどといった点で違いがあります。
それでいて、ベーシックタイプのデスクライト付き&キャビネット別が税込80,200円のところ、CDはキャビネット別で同79,800円。ほぼ同じ価格です(いずれもくろがねっと楽天市場店の場合)。
学習机メーカーに取材すると、「組み替え式デスクもベーシックデスクも同じくらいの価格になってしまうため、ボリュームのある組み替え式デスクのほうがよく売れるのが悩ましい」と聞くことがあります。ザ・デスクに関しても同様のことが言えるでしょう。
ちなみに、ザ・デスクCDのキャビネット付きが税込99,800円なのに対し、コイズミファニテックの「CDコンパクト」は標準売価が同89,800円となっています。このように競合商品と比較すると、なかなか難しいものですね。
「キュートガール」がカタログ落ち
2025年度のくろがね工作所は新作デスクが2つ追加された一方で、廃番となったものもいくつかあります。2022年度までとなった「クールボーイ」に続き、「キュートガール」(上写真)がカタログから消えてしまっています。2024年度はパープル色に加えてホワイト色も追加され、売上が伸びることが期待されたのですが、非常に残念です。
ただ、不思議なことにキュートガール用の木製チェアがリニューアルされています(WCG-25WHVL)。島忠ホームズでクールボーイが復活したように、どこかでキュートガールが販売される可能性もあるのかもしれません。
もっとも、ニトリに行けば「W」を冠した「WR24(旧・ルミエ)」がありますから、キュートガールを復活させる必要はないのかもしれませんが。
そのほか、コンポーネントデスクの「スタンダード(SC-24)」、ザ・デスクの廉価版っぽい「スチールパネルデスク(BC-23ANL)」がカタログから消えています。ただし、後者はともかくスタンダードシリーズはこれまでもカタログ外商品として販売されていたことがあるので、またお目に掛かる機会もあるでしょう。
一部商品が約3~13%値上げ
2025年度は「シンプルプラス」と「ラティック」の価格が据え置かれた一方で、「ヴィンテ3」(上写真)のデスク(約4.7%)、「ザ・デスク」のデスク(約9.0%)、デスクライト「TS-A19」(約5.3%)、学習チェア「FZFM-23」(約11.5%)など一部商品が値上げされています。消費者としては懐が痛いところですが、この程度ならやむを得ないでしょう。
ただ、安価でも学習用として十分なデスクライトが増えている現状、このタイミングでのデスクライトの値上げは厳しいものがあると感じます。値上げしてもコイズミファニテックの「ECL-357」と大きく変わることはなく、無難に同社製のデスクライトを選んでくれるユーザーが多いという判断なのでしょうか。
という感じで、2025年度のくろがね工作所の学習机ラインナップをご紹介しました。
何より注目はリニアミオでしょう。コイズミファニテックのビーノの牙城をどこまで崩せるか。そもそも売場で埋もれることなく、その魅力を伝えられる展示ができるかどうかが重要になってくると思います。
ザ・デスクをコスパの良いコンポーネントタイプに仕立て上げたCDは普通に売れそうですね。これがこの価格で買えるなら、従来のスタンダードシリーズを廃番にしたのも正解だと思います。
もっとも、スタンダードは今もくろがねっとで販売中。しかも、デスクライト付きで税込59,800円という激安価格です。たぶん在庫限りだと思うので、ご検討中の方はお急ぎください。
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コメント 皆様からご質問・ご意見など
はじめまして。ご助言いただきたくお願い致します。
ブルックリンスタイルの机を第一希望としておりまして、見た目的にはくろがねさんの島忠モデルヴィンテを検討していました。
ただ、バックのスチールボードを全部外さないと照明器具の交換ができないといった難点や(くろがねのものは動きが緩くて苦手)、お店で触ってみたらぺとぺと感があり…
天然木の他社のもののほうがいいのか悩んでいます。
L字で使う予定はないのですが色味的にリニアミオも候補です。その場合はクランプ式のマグネットボードを別に買ってつけようかと。
ぺとぺと感は経年劣化なのか、最初からなのか…カリモク触ったあとなのですごく気になりました。
ただ天然木だとコップの水染みもつくというのであれば、ぺとぺとは許容するしか…とも思ってます。
兄妹の希望で白系黒系が同形であるものでおすすめいただけないでしょうか。
予算は10万以下で袖机かあると助かります。
ちょこさま
はじめまして^^
島忠ホームズ×くろがね工作所の「ヴィネット」のようなブルックリンスタイルの学習机をお探しですね。
バックボードを全部取り外さないとデスクライトのクランプ金具が外せないというのは、私も気付きませんでしたが確かにそのようですね。
もっとも、デスクライトは4万時間も使えますから、交換する機会はそうそうやってこないとは思いますが^^;
また、くろがね工作所のデスクライト(TS-A19BK)は樹脂製アームのため、スチール製アームに比べると動きが鈍いです。
光源自体はワイドかつ調色機能付きでコスパも良いんですけど、私もアームに関してはややネガティブな評価をしています。
ヴィネットの天板の「ぺとぺと感」というのは、素手で触ったときに指紋が付くような感触ということでしょうか。
カリモク家具のデスクの塗装は天然木突板(木材を薄くスライスしたもの)に、木材の道管を完全には埋めないセミクローズ塗装を施しています。
そのため、まるで塗装をしていない木材そのもののような手触りです。
一方で、セミクローズ塗装は道管の凹部に汚れが入り込みやすいというデメリットもあります。
島忠ホームズなら浜本工芸の机もあると思いますが、こちらは木材の道管を完全に埋めるクローズ塗装です。
そのため、表面にわずかな凸凹もない鏡面になります。
それでも指紋がつかない感じになるのは、鏡面の上にフラット塗装(つや消し=ざらざら)を掛けているからです。
使っているうちにフラット塗装は剥げてきてツヤツヤになってきます。
ヴィネットの場合はMDF合板(中繊維合板)に直接木目模様を印刷し、その上にウレタン塗装を施しています。
MDF合板は極厚の厚紙のようなものですから、もちろん立体的な木目はありません。
それ自体、表面がツルッとしています。
そこにウレタン塗装を乗せるので表面が鏡面となり、潤いのある手で触ると「ぺたぺた感」が生じるのではないかと考えられます。
なお、ウレタン塗装はラッカー塗装に比べて変質が少ないのがメリットですから、店頭に展示している間に劣化してしまう可能性は極めて低いです。
ちなみに、塗膜が変質しやすいラッカー塗装の机は現在は島忠ホームズでは扱っていないはずです。
以上を踏まえまして、リニアミオはホワイトオークまたはウォールナットの突板(天然木なので木目の凸凹あり)の上にウレタン塗装を施していますから、理屈上、ぺたぺた感は少ないかもしれません。
それでもぺたぺた感があるという場合は、カリモク家具の机か、一生紀×島忠ホームズの「アエル」や「ツインデスクIS24」のようにオイル塗装のものを選ぶのもひとつの方法と言えます。
ただし、セミオープン塗装は汚れが付くこともありますし、オイル塗装はおっしゃる通りコップの輪染みができる可能性があります。
手触りと汚れやすさはトレードオフの関係にあると言えるでしょう。
ヴィンテのようなブルックリンテイストもしくはアイアン脚で、ブラック系のほかホワイト系もあって、なおかつ天然木を使ったものとなると、候補はかなり少なくなります。
コイズミファニテックの
「リシェット」は最有力候補です。
天板にはホワイトオーク突板を使っていて、個人的にはそんなにぺたぺた感はないと思います。
若干、予算オーバーかもしれませんが、書棚も付いているのでコスパは悪くないはずです。
一生紀の「FERRO(フェロー)」も2色展開です。
ただし、ブラウン色はウレタン塗装なのですが、ナチュラル色はオイル塗装です。
また、デスク天板奥行は50cmで、ヴィネットに比べると浅いです。
ほかにもブラックとホワイトの2色展開のデスクはありますが、天然木を使ったものはほとんどないです。
一生紀の「REFLE(リフレ)」などブラウンとナチュラルの2色展開の天然木デスクでご検討いただくというのもひとつの方法かもしれません。
ちなみに、デスクマットを敷けばぺたぺた感はそんなに気にならないのではないかと思います。
また、マグネットボードに関しては、クランプ式のものを取り付けるほか、壁面に山崎実業のスチールパネルtowerなどを取り付けるという方法もあります。
ご検討ください。
芝谷様
ご助言ありがとうございます!
リシェット、全く存在に気づいておらず大変参考になりました。
いま私が在宅勤務で使用しているのがISSEIKIのCONFIツインデスクなのですが輪染みが出来てしまい…調べたらオイル塗装でした。手触りはサラッとしていて好きなのですが、やはりうちの子には難しい素材かなと思います。(私にもですが汗)
リシェット、もしくは、マグネットボードをタワーに変更&デスクマットにした机のみのヴィンテを検討したいと思います。
再度お店訪ねてみます。
ありがとうございました。
ちょこさま
ちょこさんは一生紀のCONFIツインデスクをお使いなのですね。
オイル塗装の机は手触りは良いものの、特に子供が学習机として使っていると、輪染みができたり、ペンのインクが付いたり、よく分からないシミや汚れがついてくることがよくあります。
なので、私は大人が使うならともかく、学習机として使うことはオススメしないのですが、楽天市場などでのレビューは皆さん最初の印象しか書かないですからねー^^;
ともあれ、リシェットなら条件に合うかもしれないということで良かったです^^
島忠ホームズでは扱っていないかもしれませんが、その場合はお近くの家具店等でご確認ください^^