一昔前まで学習机と言えばオールインワンタイプがスタンダードでした。デスク本体、ワゴン、上棚もしくは書棚、デスクライトの4点がセットになっており、あとは椅子とデスクマットなどを選べばOKというスタイルです。コイズミファニテックの「CDファースト」などがその典型と言えるでしょう。
しかし、2019年度から大商産業がデスクライトを別売にするなど、コロナ前後から食品のステルス値上げのようなことが増えています。ワゴンがスリムになったり、別売になったり、それ以前からの傾向で言うとデスク天板の奥行が短くなっているのも同様の事例と言えるかもしれません。
もっとも、食品の場合は「便利な食べ切りサイズになりました!」なんて言われてムカッとすることもありますが、学習机に関しては消費者にとってあながちデメリットばかりでもないです。デスクライトが別売ならもっと安い市販品をセットしたり、逆に目にやさしい他社製品を選ぶこともできます。
ワゴンも同様です。近年はワゴンを買わないという選択をする方が増えています。予算を抑える目的のほか、足元をゆったりさせたいというニーズもあるからです。
現在、セレクトタイプのデスクをほとんどラインナップに有していないイトーキとしては、そういうニーズに応える必要を感じたのでしょうか。「ジュエルキュート(JB-F6WH)」にワゴン無しタイプが追加されました。
※この記事は2025年7月30日時点の情報に基づいています
ジュエルキュートにワゴンなし登場
イトーキのジュエルキュートはコイズミファニテックの「デコプリ」と並ぶ、姫系デスクの定番モデルです。もともと現在のデコプリと同様に組み換え式デスクでしたが、2020年度からベーシックデスクとなり、2024年度にデザインなどを一部変更して現在に至ります。ユニットデスクも2024年度からです。
ワゴン付きで見慣れている私としては「あれ、ワゴンは?」って感じですけど、もともとシンメトリー(左右対称)なデザインなので意外と違和感はないと思います。価格は従来のワゴン付きよりも2万円安い税込49,900円。手が届きやすい価格帯と言えるでしょう。
スリムオープンワゴンも登場
同時に、スリムオープンワゴンタイプも追加されました。ニトリの「メルシー」も2022~2023年度に同様のスリムオープンワゴンタイプが用意されていましたが、それと同じような感じです。引出しはどうしてもコストが掛かりますから、棚に代えることでコストダウンを図れます。
ワゴン無しでは収納量に不安がある、かと言って従来のワゴンでは大きすぎると感じる方には、良い選択肢かもしれません。
コスパは案外悪くない
年度 | 2026年度 | 2018年度 | |
---|---|---|---|
商品名 | ジュエルキュート | コファーノ | カモミール・セレクト リーモ・セレクト |
引き出し型 | 63,545円 | 103,000円 | 114,000円 |
ワゴンなし | 45,364円 | 73,000円 | 80,000円 |
価格差 | 28.6% | 29.1% | 29.8% |
私はジュエルキュートのワゴン無しタイプの価格を見たとき、直感的に割高だと感じました。イトーキのワゴンは競合他社より奥行が深いA3ロングサイズワゴンで、差額の2万円で買えるはずはなく、ワゴン無しなら税込49,900円よりも安くて然るべきと考えたからです。
そこで、過去にワゴン無しで購入することができたモデルと比較してみました。すると、もっともスペックが近い「コファーノ」でワゴン無しにすると約3割の価格差になることが分かりました。「カモミール・セレクト」や「リーモ・セレクト」も同様に約3割です。
翻ってジュエルキュートはと言うと、こちらも価格差は約3割という結果に。つまるところ、パーセンテージで言えば、ジュエルキュートをワゴン無しにしても決してコスパが悪いわけではないと言えるでしょう。
ジョイカラーに波及する可能性も?
今回、ワゴン無しタイプとスリムオープンワゴンタイプが投入されたのはジュエルキュートのベーシックデスクのみです。これはまずこの1モデルで様子を見たいということでしょう。手応えがあれば、同じ価格でデザインも同じジュエルキュート・ユニットデスクでも、同様の展開をすることは容易と考えられます。
同じ価格の「ジョイカラー」(上写真)への展開もしやすいと思います。スリムオープンワゴンを作らずにワゴン無しだけなら今すぐにでも可能なはずです。
そうなれば、ジョイカラーの価格は税込49,900円で、コイズミファニテックの「ミニマル」よりも安くなります。ミニマルはベーシックデスクにもユニットデスクにもなりますし、ワゴンを買い足すことも可能で、全段フルスライドレール、スイングフックも搭載しています。一方で、ジョイカラーは天然木突板天板という強みがありますから単純比較はできないものの、こういう比較ができると学習机市場は盛り上がるに違いありません。
価格が高くなりすぎたカモミールやリーモも、ワゴンを別売にすることで手が届きやすくなると思います。個人的にはむしろこちらのほうが期待大です。
という感じで、ジュエルキュートのワゴン無しタイプが投入されたことを端に、いろいろと勝手な妄想を膨らせてみました。
まず、ワゴン無しでも決して割高になっていないという点はご安心いただければと思います。コストを掛けることなく消費者の選択肢を増やしたイトーキの戦略は見事です。欲を言えば、ワゴンを追加で買い足せるとありがたいですね。
デスクランドの社長もおっしゃっていましたが、コイズミファニテックもCDコンパクトならノーマルワゴン、リフティングワゴンが欲しければCDファーストを買ってくださいという体制じゃなくて、ワゴン無し、ノーマルワゴン、リフティングワゴンのいずれかを選べるようになれば良いと思います。ついでに言うと、デスクライトも別売で良いんじゃないでしょうか。
それで言うと、他社に先んじてワゴン別売やスリムワゴンを積極的に展開したくろがね工作所は実は先見の明があったじゃないかと改めて思ったりもします。何が正解かなんて、案外わからないものですね。
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