以前に学習机の産地と引出内部材の関係の一覧を作りましたが、今回は引出の素材(内部材)の機能的な比較をしてみたいと思います。
現在、学習机の引出の素材(内部材)で一般的なのは、ファルカタ(洋桐)、白塗りした粗悪な桐、樹脂フィルム貼りのパーティクルボードの3種類。ほか、浜本工芸が本桐を使用していますが、性質としてはファルカタとほぼ同じと言って差し支えないと思います。あと、カリモク家具がシナ、杉工場がヒノキ(檜)を使っています。今回はそれらの素材について比較してみたいと思います。
本桐・ファルカタ(洋桐)
大手学習机メーカーの場合、引出の素材はグレードに応じて3種類を使い分けるのが一般的ですが、最上級はファルカタ(洋桐)であることが一般的です。見た目、手触りに優れ、材料コストがもっとも高いです。
桐には調湿作用があると言われますが、もっとも引出の精度が高い浜本工芸の学習机でも引出と本体の間には十分なすき間がありますので、調湿作用はまったく期待できませんし、そもそも衣類を保管するわけではないので、調湿作用は必要ありません。また、桐には防虫効果があると言われますが、これも衣類を収納するわけではないので基本的には必要ないと思います。
それでも本桐やファルカタを積極的に使うのはやはり高級感があることがあることが一番の理由だと思われます。また、特に金属製のスライドレールを使わない場合には、本桐やファルカタは軽くて表面が滑らかなので、引出を開閉したときに何とも言えない満足感が得られるからだと思われます。
ちなみに本桐やファルカタの引出は割りと汚れやすいですが、紙やすりで少し削ればキレイになります。
白塗りのファルカタ(洋桐)
ファルカタは程度の良くないものになるとかなり表面が黒ずんでいますので、それを隠すために白く塗って引出内部材として使う場合があります。ですのでランクとしてはファルカタ(洋桐)より下であるものの、材料コストの面では後述の樹脂フィルム貼りのパーティクルボードよりは上と言えます。
引出の中が汚れた場合は前述の本桐やファルカタのように紙やすりで削ると、塗装が剥がれて黒ずんだファルカタが露出することになります。逆に白い塗料で上塗りすれば物理的には問題ありませんが、実際は難しいと言えるでしょう。
シナ
カリモク家具は学習机に限らず他の家具でも引出内部材にはシナを使っています。シナの漢字は木偏に品と書きます。表面にシナの突板を貼った合板がシナ合板で、化粧合板としてはポピュラーですね。
シナは本桐やファルカタよりも表面が少しだけ固くて滑らかで汚れにくいように思います。そのあたりがカリモク家具がシナを使う理由かと思います。名よりも実を取る感じでしょうか。
シナの引出が汚れた場合には本桐やファルカタと同様に紙やすりで削ることでキレイにできますが、シナのほうが少し硬いのでちょっと難しいかもしれません。
ヒノキ(檜)
杉工場は引出内部材にヒノキ(檜)を使っています。ヒノキには抗菌・防カビ効果があると言われます。また、ヒノキに含まれるフィトンチッドにより森林浴効果で癒しの作用があるとも言われます。ただ、いずれの効果も桐やファルカタと同様に限定的ではないかと個人的には考えています。
ヒノキの引出も汚れれば紙やすりで削ることでキレイにすることができますが、もともと表面が滑らかなので番目のかなり細かいもので削るようにしないと逆に表面を荒らすことになるので注意する必要があります。
樹脂フィルム貼りのパーティクルボード
引出内部材としてもっともグレードが低いのが樹脂フィルム貼りのパーティクルボードです。コストはもっとも安いですが、汚れても拭くことができるのでもっともメンテナンスが容易です。
私はその点で樹脂フィルム貼りのパーティクルボードを相当に評価しているのですが、樹脂フィルム貼りのパーティクルボードは表面の樹脂フィルムが剥がれてくることが多いのです。 表面の樹脂フィルムが剥がれてくると見た目が悪いだけでなく、引出が開けにくくなり、最悪の場合は引出が開かなくなることもあります。ですから樹脂フィルム貼りのパーティクルボードの引出は、これから10年以上も学習机を使うことを考えると、やはり避けたほうが無難だと思います。
以上、引出の素材を比較してみました。ちなみに引出の底板は本桐やファルカタの場合はそれらの突板であったり、プリント紙であることが一般的です(カリモク家具の場合はシナの突板=シナ合板)。突板であれプリント紙であれ非常に薄いものなので、削れば芯の合板が剥き出しになってしまいます。ですから基本的に底板は削ってキレイにすることはできません。この点はくれぐれもご注意ください。
コメント 皆様からご質問・ご意見など