昨年に引き続き、業界紙である『家具新聞』(2017年11月8日号)に学習机評論家として寄稿させていただきました。
業界の諸先輩方を前にして「学習机はスペックから感性で選ぶ時代へ」などとエラそうなことを申し上げておりますが、そこは若輩者の戯言として読み流していただければと思います。
しかし一方で、今は昔のように平日に社員一人で何百万円もの家具が売れるような時代ではありません。お客様は神様ではありませんが、どんどんワガママになってきているのです。
今回の寄稿はそんなワガママな消費者の一意見として耳を傾けていただければと思っております。
学習机はスペックから感性で選ぶ時代へ
2018年度のお子さんの御入学を控えて学習机を買わんとする方々からするとピンと来ない話でしょうが、私が長女のために学習机を購入した当時は学習机にはデザインという概念がほとんどありませんでした。ハイエンドモデルはナラ無垢、スタンダードモデルはラバーウッド無垢、そしてカラーデスク。あとは各社で若干異なる仕様や価格で選ぶという感じでした。
しかし、今はそういう時代ではないですよね。一部のメーカーは除いて、デザインの好みで選ぶという感じになってきています。もちろん、「このデザインが気に入ってるんだけど奥行があと5cm深ければ…」ということはあろうかと思いますが、そう考えているときもやはりデザインが先行しているわけです。
こういう流れになってくると、学習机評論家としての私の立場が危ういです(苦笑)一昔前は材質や機能の面でのご相談が多く、「こっちのほうがお買い得!」などと言いやすかったのです。しかし、デザインは個々人の好みです。どちらが良いということは一概には言えなくなってきています。
品質が一段落した結果デザイン勝負に
さらに、競争が激しくなり各社ともに切磋琢磨した結果、品質的にも一昔前に比べると安定してきました。もちろん、「こんなのはやめておいたほうが良いですよー」というものは未だにあります。ただ、基本的に私はあまりネガティブなことを申し上げたくないので、そういうものはここで紹介することはありません。結果的に、こちらでオススメしているものの中で選んでいただければ安心というわけでございます。
今のように学習机をデザインで選べるようになったのは、一重にメーカー各社の努力の賜物だろうと思います。一方で、デザインだけで品質という概念が日本人とはかけ離れている大型輸入家具販売店の存在もありますので一概には言えないものの、その影響で日本の学習机メーカーが品質にプラスしてデザインという方向性を持ったこと自体は、結果的には良かったのだと思います。
より重要性を増す家具販売店の存在意義
悩ましいのがラストワンマイルを握る家具販売店の存在意義です。いくら良い売場を作って、値段も精一杯頑張っても、売上はネットショップに持って行かれる可能性だってあるからです。
ただ、私もいろんなところで学習机を見てきましたが、本当に良いと思える売場なんてほとんどないのが実情です。おそらく読者の皆様も思っているところだろうと思います。見たい商品がない、販売員の商品知識が乏しいなど、何かしら物足りなさを感じるのです。
ちょっと話は変わりますが、「価格.com」ってあるじゃないですか。家電の最安値を比較したり、商品のレビューを見れるサイトです。
あそこで売れるのは95%がそのときの最安値を提示しているショップだそうです。そして、その最安値で販売したショップの手元には30~40円の利益しか残らないそうです。
以前にアイルインテリアエクセル(宮崎ながの)を取材させていただいたときも「配送会社のために働いているようなもの」という話がありましたが、これだけ競争が激しくなってくると販売店は、リアル、ネットにかかわらず、「儲かるかどうか」ではなく「生き残れるかどうか」の争いになっています。
しかし、ネットには手を出さず、もしくはあまり力を入れておらず、ネットショップとの競合ばかりをグチグチ言っているようなお店は、未だにお店の都合で粗利を重視した商品展開をやっていますね。
消費者は自然とそういうお店とは距離を置くようになってきていると思います。というか、数字で表れてきていますよね。せっかくラストワンマイルを握っているという好条件にあっても、それを活かしきれていない家具販売店が多いです。
個人的には、学習机は地元の家具販売店で買っていただきたいと願っています。それはやはり、地元で長年培ってきた信用があり、安心して買っていただくことができると思うからです。
しかし、その評価に値するかどうかは、消費者が自らの目で判断するしかありません。その結果、地元から家具販売店がなくなっていくかもしれませんが、それもまた自然の流れでしょう。
ここでまとめてしまうと、いかにも家具販売店の努力が足りないと申し上げているように聞こえかねませんが、決してそういうつもりではありません。私が申し上げたいのはむしろ、メーカーも販売店もインターネットでの発信が弱いということです。
「この空中戦の時代にいつまで地上戦をやっているの?」と思う気持ちが日増しに強くなってきています。読者の皆さんも、もっとネットで情報収集できれば良いのにと思うところが多いことでしょう。
もっとも、そうなってくればなおさら私の存在意義が危うくなるわけですが(苦笑)、消費者、販売店、メーカーそれぞれにとって、より良い方向に向かっていくことを願うばかりです。
【コメント】 皆様からご質問・ご意見など
収納マン様
こんにちは。
私は、機能美という言葉もあるとおり、また、デザインに金を使っていないものは、中身もこなれていないし、お金を使っていないというのが持論です。だから、家具でもワインでも日本酒でも、感性、デザインで買ってます。酒の場合はラベルです。
ラベルも、金色銀色使い、手が混んでいたり、ボトルの首にもラベルが貼ってあると、中身もだいたい当たりです。
hideさま
こんにちは^^
私はお酒を飲まないので分からないんですけど、確かに高級なものはパッケージも細部にわたり高級ですよね。
そう言えば、浜本工芸の製品のダンボール箱もたぶん業界一頑丈ですね^^
印刷色に2色使っているというのも珍しいのではないかと思います。
収納マン様
こんにちは。
機能とデザインは相関関係があるというようなことを申し上げましたが、相関関係がないのが、昇降袖の引き出しが2杯か3杯がですね。機能的には2杯、既視感あり職人の魂が込められや机の神様がいそうなのが、3杯といったところですね。
ちなみに、前から気になっていたことを、本日、浜本工芸の広島ショールームに確認しました。昇降袖の方が金具で重いので、耐荷重量も重く頑丈なキャスターを使っているのかと思ったら、同じだそうです。
カタログ値どおり30キログラムということでしょう。
hideさま
基本的に私は、デザインは美しいか美しくないかというものではなく、どういう意味が込められているかが重要だと考えています。
ユニバーサルデザインというものなどはその典型ですよね。
また、昇降袖の引出しが2段か3段かというのも、使い手に取って意味を見出すことができれば、それは良いデザインだと思います。
それはさておき、浜本工芸の昇降袖のキャスターの耐荷重なんてカタログに書いてありました?
もし30kgということなら、袖そのものの重量で20kgくらいになってしまい、残りは10kgくらいということになってしまうように思うのですが…。
ともあれ、浜本工芸の場合は随分と控えめに耐荷重について考えているように見受けられるので、そういう矛盾を感じるような表示になることもあるのかなーと思ったりもします^^;
収納マン様
すみません。浜本の机のカタログ、13ページに30キロとありますが、これは、広島ショールームに確認したところ、No.17袖天板の耐重量なので、キャスターの耐重量はもっとあるはずだが、詳しいことは不明とのことです。一般の移動袖は上に載せることを想定していないので、天板の耐重量はわかりかねるとのことです。一般の昇降袖の天板耐重量とキャスターの耐重量についてもこのNo.17の移動袖と同程度と思われとのことで、キャスター耐重量は、袖重量と中を満杯にした重量以上は優に超えてるはずとのことです。ショールームでは、その数値は把握していないので、必要があれば、本社に平日確認して欲しいとのことです。さらに、袖の種類にかかわらず、使用しているキャスターは同じとのことです。カタログの内容もすべて記憶している様な詳しい社員の方でした。
机は奥が深く難しいですね。
hideさま
詳しく教えてくださりありがとうございます!
耐荷重等については過去に実施した試験データなどからある程度のことは分かることが多いものの、正確に調べようとすると検査機関に商品を提出する必要があり、多くの費用が掛かるということです。
業界全体で統一基準を設けようとする動きもあるようですが、結局は費用の負担がネックになっています。
本当に難しいところですねー。
※投稿が重複した分は勝手ながら削除させていただきました。
こんにちは
まだまだ価格検討中の我が家です( ノД`)
今回、大きな店構えの家具店を数件
回らせていただいた結果………
ご年配の店員さんが多すぎる。
正直、大丈夫?と聞きたくなるような
腰の曲がった方や香水をプンプンの方。
接客業だからもう少しきちんとした
ワイシャツ着ようよと思う男性のおじさん。カリモクと浜本工芸で検討と伝えると、浜本工芸は、皇室でも使われと連呼し、性能は全く説明できないおばさま。
受付(配送伝票等各であろう)カウンター
には金魚の水槽。
等あげるときりがないです。
に比べ………
洗礼されて展示された
カリモクのショールーム。
子どもの心は正直で。
滞在時間が大幅に違いました。
輸入大手家具店やネットに顧客を取られた
と考えるのであれば、やはりまずは内側を見つめ直していただきたい。
値段は家具店が、安かったんですが
正直、配送は家具店店員であるのであれば
数%高くても、大手チェーン店の方がと
考えてしまう次第です。
しかし、どんなに家具店が勉強し。
感性でデスクが買われる時代が来ても
収納マンさんは大切ですよ。
家具店……やはり、販売するからには
メーカーとの付き合いもあり
売りやすいメーカーもあるかもしれません
そうなるとやはり第三者的な
収納マンさんのような存在は大きいと
思いますので。
お忙しいとは思いますが
これからも発信楽しみにしています!
机 悩み子さま
私に存在価値を見出してくれてありがとうございます^^
これからも引き続き頑張って更新して参ります!
さて、家具店のベテラン販売員の件。
これは本当によく分かります^^;
家具店でよく売る販売員は商品の説明をしないんですよね。
逆に言うと、商品の説明をしないことが良いことと思われている風潮があります。
実際、家具をよく売るパートのオバチャンは商品知識がほとんどないのに売りまくっているという現実もあります。
でもそれは冷静に見るとちょっと例外的なケースで、本来は商品知識を十分持っているのにそれを振りかざさずに商品を買っていただくべきだと私は考えています。
具体的に言うと、「浜本工芸の学習机は皇室でも使われている」などということは接客初めのトークとしては良いと思います。
ただ、そこから繋がるトークは、引出しの良し悪しやナラ無垢云々ではなく、「ほかにもいろいろご覧になったんですか?」とか「どちらのお部屋に置かれるご予定ですか?」といった買い手のニーズを探るトークだと思います。
そのうえで、お客さんから聞かれた質問にビシッと答えられたら、それは良い販売員と言えるでしょう。
受付カウンターに金魚鉢というのも思い当たる節があります^^;
私の感覚からすると、インテリアショップとしてのセンスを疑います。
実際のところ、そういう雰囲気のお店はそこで働く人にとっては居心地が良いのだと思います。
何も変わらないです。
競合の家具店が潰れても、「家具が売れなくなったよねー」と言うだけ。
お客さんが「イデーの家具と悩んでいる」と言っても「は?井出商店ですか?」ってなもんです。
自分にとって居心地の良い空間から出ることを忘れてしまっているから、世の中の変化についていけないのです。
とか何とか言いながら、私もまだまだ勉強不足を痛感しますし、もっとどんどん新しい情報を集めて来ないといけないと思っています。
しかしながら昔の家具人が「サブロクかヨンパチか?」(合板の歩留まりの話)と言ったように私も「コスパ」という概念から抜け切れません^^;
その点、カリモク家具は本当にスゴイと思います。
現在、もっともパーフェクトな家具メーカーと言って間違いないでしょう。
カリモク家具のような家具メーカーがあと2~3社あれば良いんですけどねー。
収納マン様
こんにちは。
ご存知かもしれませんが、和家具の研究家のひとりとして、小泉和子さんという人がいます。元大学教授、今は自宅を改造した昭和のくらし博物館館長をされてます。東京都大田区にあります。私も以前会員になってました。
その人の著書で、和家具の特徴とは、①ユニット式、②正面からの意匠性しか考慮されていない ③左右非対称 ④直線的なので、細かい細工で柔らかさを出している。
と述べられています。
つくづく、学習机は和家具の伝統をくむものだと思います。
hideさま
こんにちは^^
お恥ずかしながら存じ上げなかったのですが、なるほど確かに学習机は和家具っぽい要素があると言えそうですね。
加えて言えば和家具は洋家具と比べると、寸胴で、日本人の身長に合った高さです。
学習机も最近は脚がスタイリッシュになってきましたが、学習机も時代とともに西洋化してきたと言えるかもしれませんね^^