違法材「ナラ」いらない!学習机メーカー各社に対応状況を問い合わせてみた

先日、ネットで調べ物をしていたところ、たまたま”ボク、違法材「ナラ」いらないよ!”(国際環境NGO・FoE Japan)というページを見つけました。

違法に伐採された木材を使うことは良くないことであることは分かります。しかし、この表現ではまるで大手学習机メーカーが違法材を使っているかのように誤解を招くと感じました。また、運営者はメーカー各社に対して調査することもできたはずなのに、それをせずに消費者各々でメーカー各社に問い合わせるようにはたらきかけていることは、威力業務妨害とみなされる可能性があるのではないかと感じました

私は学習机は素晴らしいものだと思っています。また学習机メーカーの想いも素晴らしいものだと信じています。だからこのような誤解を招きかねないページが存在することに強い怒りを感じました。そこで早速、当該ページに名前が挙がっているメーカー各社に、消費者に代わって問い合わせることにしたのです

広葉樹・イメージ

 

メーカー各社に問い合わせてみたところ6社から回答

「大手学習机メーカーリスト」に名前が挙がっていたメーカー各社に対して「違法材の使用に関するアンケート」をメールで送信し、回答をいただくことにしました。結果、下記の6社より回答をいただくことができました(回答順)

  • イトーキ
  • カリモク家具
  • コイズミファニテック
  • 浜本工芸
  • オカムラ(岡村製作所)
  • ヒカリサンデスク(光製作所)

学習机シーズンのもっとも忙しい時期にも関わらず、丁寧に対応してくれました。本来当たり前のことかもしれませんが、こういうのはすごく印象が良いですよね。私としても上記6社の名誉が回復できたことはとても嬉しいです(回答の詳細については後述)。

一方で、結果的に回答がなかったのはマルニ木工とくろがね工作所

マルニ木工からは回答期限が過ぎてから、一応、返信はあったのです。しかし驚くべきことにマルニ木工から届いた返信には、”貴方と国際環境NGO FoE Japan との関係はどのようなものでしょうか。”(原文ママ)という逆質問のほか、私の素性を尋ねる内容などが書かれていました。何かやましいことでもあるのでしょうか。こちらからもすぐに返信しましたがその後半月を過ぎても回答はありませんでした。

いくらカタログに「安心・安全」と謳っても、これでは中身が伴いません。今回わたしがおこなった問い合わせは、私が思っていた以上にシビアな内容を含むものだったようで、各社ともに少なからず戸惑いを感じていたようです。しかし今回のことに限らず、メーカーに寄せられる問い合わせというものは、往々にして難しい対応を迫られるものです。それをまず相手を疑うところから始めるなどという対応は、企業としていかがかと思いました。

くろがね工作所へは回答期限を過ぎてから電話で催促したのですが、こちらもその後半月を経ても回答はありませんでした。ホームページのお問合せフォームも壊れており、こういう体制ではちょっと困りますね。

なお、リストにあるオクモト(奥本木工所)とコスガは既に倒産しています。この記事はどうも2007~2008年頃に書かれた古い内容のもののようです。

 

違法材の使用に関するメーカー各社の回答

「ウチはノーチェックです」とか「実は違法材を使っています」なんていう回答をするメーカーなんてあるはずがないですから、回答があっただけでも私としては満足です。一方でマルニ木工やくろがね工作所から回答がなかったからといって違法材を使っていると言うことはできません。少なくともマルニ木工はカタログに”グリーン購入に適した製品開発に努めています”と書いてますから、回答があったとしてもたぶんそう答えたのではないでしょうか。

各メーカーへ問い合わせした項目は下記の通り。基本的には当該ページにあるものとまったく同じですが、ページが作られた時期から随分と経っていますので、6番目では過去のことについても質問させてもらいました。

  1. 「この机の材質は何ですか?」
  2. 「どこで製造されていますか?」
  3. 「伐採地はどこですか?」
  4. 「違法伐採ではないですか?」
  5. 「どのように確認していますか?」
  6.  2007~2008年当時に違法伐採された木材を使用された事実はありますか?

イトーキ

  1. 2007年~2008年当時、弊社学習机で使用していた天然木は「ナラ」「バーチ」「ラバーウッド」です。
  2. 当時、弊社学習机は「中国」「タイ」「ベトナム」「日本」で製造しておりました。そのうち天然木を使用した学習机は「中国」「タイ」「ベトナム」で製造しておりました。
  3. ~6. 製造協力会社に対し合法材料使用を指示はしておりましたが、合法証明書等の資料が残っていないので正確にご回答することは致しかねます。

カリモク家具

  1. オーク材(なら材)
  2. 製品に関しましては国内(愛知・岐阜)で生産しております。
  3. 日本(なら)・アメリカ北東部(ホワイトオーク)・ロシア(なら)
  4. 国内の政府調達物品にはグリーン購入法と言うものがあり、その基準の一つに違法伐採等された木質材でない事の証明義務がある。その証明方法は証明の連鎖がされていれば良いことになり、弊社としても購入先からの証明書の調達を行っている。また、日本家具産業振興会が昨年4月に打出した「国産家具表示制度」においても木材基準があり、この基準としては、購入先が加入している業界団体や組合等から取扱っている木材・木製品の合法性・持続可能性の証明を行うための事業者認定を取得している会社からの調達であれば良いと言う決まりになっており、弊社も同様に日本家具産業振興会より認定受けており、かつ生産品の材料調達は認定業者より調達されている。
  5. 同上
  6. グリーン購入法の改正が2006年に行われ当時は上記のような証明の連鎖があまり意識されていない業者も多く証明書が取りづらい状況があると同時に業界団体や組合等においても認識が低い状況で業者認定制度も少ない状況だった様に認識しています。当時、弊社も同様に取引先からの証明書が調達できない以上は、グリーン購入法適用品番から下げていた品番も少なくはありませんでした。

コイズミファニテック

  1. ナラ、タモ、カバ、ゴム、MDF
  2. 中国、インドネシア、マレーシア、ベトナム
  3. ~6. 協力工場(家具工場)が自社の保有調達ルートにより材料調達を行っている。伐採証明書(確認元:ロシア連邦林業管理局/中国林業局/黒龍江省林工業局)を以って確認している。自社木材調達方針として、自社制定のグリーン調達管理基準…ISO14001活動の一環として、合法性を確認している。

浜本工芸

  1. 主材はナラ材です。(一部機種はレッドオーク材)
  2. 加工から仕上げまで、国内自社工場(広島県広島市、広島県廿日市市)で行っています。
  3. ナラ材はロシア、レッドオーク材は北米です。
  4. (違法伐採では)ございません。
  5. 公的な伐採許可証又は合法証明書を取得しております。
  6. (過去に遡って違法伐採の事実は)ございません。

オカムラ(岡村製作所)

  1. MDF(中質繊維板)
  2. ベトナム
  3. ~6. 使用MDFの原材料については、特に伐採地等を確認していないため、違法伐採についても確認されておりません。2007~8年当時の製品においても、MDFを主要材料としていたため、上記同様確認されておりません。

ヒカリサンデスク(光製作所)

  1. ナラ、クルミ、パイン
  2. 中国、ベトナム
  3. ナラ:ロシア、クルミ:中国、パイン:北欧
  4. 中国生産(ナラ・クルミ)では伐採許可を持った工場で製造した製品を購入しています。ベトナム(パイン)では伐採許可を持った材料会社から購入した木材(植林材)で生産した製品を購入しています。
  5. 中国生産(ナラ・クルミ)では生産工場が伐採許可を持っています。ベトナム(パイン)では材料会社が伐採許可を持っています。
  6. 過去の調査はできませんが伐採許可を持った工場で製造した製品を購入していました。



メーカー各社から回答をいただいたのちの所感

私としては一般の消費者から同様の問い合わせがあった場合に各社がどのように回答するかを聞きたかっただけなのですが、シビアな内容を含むため、各社ともに関係部署に確認する必要に迫られるなど、大変お手数を掛けてしまいました。改めてお詫び申し上げるとともに、誠実にご対応いただけたことを感謝いたします。

また、私が調査する過程で、当のNGO団体が何の根拠もなく学習机メーカーが違法材を使っている可能性を指摘したわけではないことも分かりました。決して名誉を棄損することを目的として当該ページを作成したのではなく、また特定のメーカーを名指しして吊し上げようとすることなく、わざと違法材を使っていないメーカーも併せてリストを掲示したのだろうと理解しました。

今でこそトレーサビリティ(追跡可能性)という言葉がテレビのニュースやワイドショーでも使われることが増えましたが、以前はあまり浸透していない概念だったと思います。ですから現在の認識で判断すると誤解を生じかねませんが、当該ページが作られた時期には決して悪意はなくても中国やロシアでは伐採証明書が添付されないというようなことは少なからずあったようです。

しかし今後はますます企業にトレーサビリティ(追跡可能性)やコンプライアンス(法令遵守)という概念が求められるようになっていくはずです。”お子さんの記念すべき入学祝いですから、違法材の製品で汚すことのないように”、学習机メーカー各社にはこれからもしっかりと対応していただきたいと思います。

【コメント】 皆様からご質問・ご意見など