今年も業界紙の『家具新聞』に寄稿させていただきました。学習机メーカー各社の展示会を拝見させていただいたうえで2020年度の学習机市場の動向について述べています。
浜本工芸、イトーキ、コイズミファニテックについてはこちらでも既にご報告した通り。くろがね工作所は現在、展示会レポートの原稿チェックをお願いしているところです。もう3週間以上も経つので、さすがにそろそろじゃないかと思います。先方のチェックが済み次第、ご報告したいと思います。
ほかのメーカーの展示会は首都圏での開催だったため、残念ながら私も見ていません。家具新聞の記事をもとにこちらで簡単にご紹介しましょう。
小島工芸の新作は「ポライト」
私の記事の下にある、小島工芸の新作デスク「ポライト」が気になって仕方がないという方もいらっしゃったことでしょう。
ポライトは奈良県吉野産のヒノキ集成材をふんだんに使った机。机上のタブレットスタンドに20文字までのメッセージを彫ってくれるだけでなく、机を手放す際は小島工芸に送るとスマホスタンドに作り直してくれるそうです。
年商約15億円の小島工芸が目標1億円(たぶん上代ベース)と本気を出した新作デスク。目標500台だそうです。目標を高く持つことは素晴らしいことだと思います。詳しくは小島工芸のプレスリリースをご覧ください。
オカムラは「K-MODEL2」に進化
オカムラは百ます計算の隂山英男先生監修の「K-MODEL(かげやまデスク)」を「K-MODEL2」にリニューアル。今度は左右にスライド、取り外しも可能な、傾斜天板が付きます。
家具新聞に掲載された写真を見る限り、天板昇降機能はなくなったように見えます。その一方で、脚がスタイリッシュになるとともに、天板奥に配線収納スペースを設けているようです。
ヒカリサンデスクも男前デスク投入
2020年度はヒカリサンデスク(光製作所)からもイトーキの「ウットフォーク」に似たデザインのデスクが登場します。商品名は「サンビジョン」。
サンビジョンのスペックを見ると「サンワークス3」に近い感じがするのですが、果たしてサンワークスは継続されるのでしょうか。そこが少し気になるところです。
2020年度の学習机市場は大荒れ必至?
- イトーキがほぼEC販売のみに
- コイズミファニテック事業再編
- ウットフォークもどきの乱立
- 消費税8%→10%に
ポストイトーキを巡る動向
というわけで、大手学習机メーカーの動きがザクっと分かったところで、2020年度の学習机市場を占ってみたいと思います。
まず一番影響が大きいのが、ほとんどの家具販売店でイトーキが学習机売場から姿を消すことです。普通ならコイズミファニテック、くろがね工作所、オカムラあたりがシェアを奪いに来るところでしょうけど、どうもそんな感じにはならないのではないかと思います。
その理由のひとつは、コイズミファニテックもくろがね工作所もラインナップを減らしているからです。おまけに、コイズミファニテックは早い話がリストラクチャーによって人員に余裕がありません。くろがね工作所は先日の不適切会計のゴタゴタの影響は現場には及ばないでしょうが、もともと人手が足りていません。オカムラも人員が少なく、普通で考えればカリモク家具か浜本工芸くらいしか売場を担えないでしょう。
そこですんなりとカリモク家具と浜本工芸を中心に売場構成を考えるか、バイヤーの一存で別の方向に向かっていくのか。基本的には販売店次第ではあるものの、今まで以上に違いが出てきそうです。
どこもかしこもウットフォーク
2020年度はイトーキが売場から消えることで、ウットフォークもどきが各社から発売されます。これはデザイン的に売れているからというだけでなく、原料コストを抑えるためにスチールとのハイブリッドにしたということもあるのでしょう。
しかし、どこに行ってもウットフォークもどきがある状態になると、売場にウットフォークが並ばないイトーキにはダメージ大です。また、いくらウットフォークが人気だとは言え、さすがに各社で十分な台数を捌けるほど大きな市場はないはずなので、一過性のブームに終わってしまう可能性もあります。
消費者としても、一周回ってやっぱり普通の木製デスクのほうが良いわって流れになってしまうかもしれません。
消費税アップの影響はあまりない?
今年は10月に消費税が8%から10%に上がるという話があります。しかしながら、どうも自民党は参院選が終わるまで明言を避け続ける意向のようです。
消費増税が決定したら急に駆け込み需要が発生するのかもしれませんが、8月はまだ学習机がほとんど並んでいません。そこに間に合わせられるように動けるメーカーもありませんし、そもそも家具販売店は学習机よりももっと幅広いニーズが見込める脚物家具(ソファ、ダイニングセット、ベッドなど)の売場を充実させるはずです。
また、学習机を発注してもまだ初回展示分の生産がメインなので、9月中のお届けに間に合わせるのは難しいものが多いと思います。そんなわけで、学習机市場に関しては消費税アップの影響はほとんどないでしょう。
普通ならイトーキの後釜を狙って各社とも鼻息が荒くなりそうなものですが、現状は逆に「明日は我が身か」という声すら聞こえてきそうな雰囲気です。また、消費増税前の駆け込み需要に期待する声もほとんど聞こえてきません。むしろ反動減の心配のほうが多いようです。
年間販売台数や金額の予測も控えめで、令和という新しい時代を迎えたにもかかわらず、まったく明るい未来が感じられないムードになっています。フタを開けてみれば、良かった良かったというような展開になれば良いのですが、それはちょっと楽観的すぎるのでしょうか(苦笑)
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