「頭のよい子が育つ家」には学習机は要らない?

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2018年度のコイズミファニテックの学習家具カタログは、2017年度と比べて少し、けれども大きな変化がありました。それはスタディアップデスクの紹介ページに四十万靖(しじまやすし)先生が登場していないということです。

コイズミファニテックのスタディアップデスクは2016年度に大量投入されたシリーズで、従来の組み替え式デスク(ステップアップデスクなど)主流の学習机市場を一変させた画期的な学習机です。

そして、その開発に一役買ったのが『頭のよい子が育つ家』を著書に持つ四十万先生というわけです。2018年度のカタログから四十万先生の姿が消えたのはおそらく契約の関係という大人の事情があったものと思われますが、スタディアップデスクの登場からわずか3年目にしてカタログから消えたことはちょっと意外でした。

 

『頭のよい子が育つ家』

頭のよい子が育つ家 (文春文庫) 四十万 靖 (著), 渡邊 朗子 (著)

四十万靖先生と渡邊朗子先生の共著『頭のよい子が育つ家』は単行本が2006年に発行されました。私が持っているのは文庫本で、先日改めて読んでみたのですが、発行から10年以上経つ今読んでもほとんど違和感なく読むことができる良書です。

ぶっちゃけ、首都圏の有名私立中学校の名前を知っていて当然という流れで話が進むところは関西人としてはイラッとするところですが(苦笑)、タイトルは「頭のよい子」としているものの、決してそういう意味ではないと度々断っているところに、四十万先生の人の良さが垣間見られます。

この本の要旨を私なりに簡単にまとめると以下のようになります。

  • 良い学習環境は家族のコミュニケーションが取れることが重要
  • 立派な子供部屋を作って子供を隔離してはいけない
  • 「学習机は要らない」とは一言も書いていない

家族のコミュニケーションが重要

この本で書かれていることを一言でまとめるとすれば、「良い学習環境は家族のコミュニケーションが取れることが重要」ということに尽きると思います。子供が集中して勉強できるようにと子供部屋に缶詰めにするのではなく、リビングダイニングに家族が集まってそれぞれが自分のことをするという感覚で勉強させたり、ときに子供部屋に家族が集まるスタイルでもOKということが書かれています。

四十万先生は主に住宅設計のお仕事をされているのですが、「頭のよい子が育つ家にするためにはこういう間取りの家でなければならない」などとも言っていません。むしろ逆に、「頭のよい子が育つ家はどんな間取りでも実現可能」という風に述べています。

これらのことについては私も同感です。とにかく家族のコミュニケーションが重要。ただし、「宿題しなさい!」、「ちゃんと片づけなさい!」というのはコミュニケーションではありません。良好な人間関係を築かなければ、この本に書かれているアイディアを真似したところで、よい子供には育ってくれません。

立派な子供部屋は要らない

四十万先生は「立派な子供部屋は要らない」とも言っています。決して「子供部屋は要らない」のではなく、「立派である必要はない」というところがポイントだと思います。

本書では子供部屋ではほとんど勉強せずに家中のあちこちで勉強する子供の様子が書かれていることが多く、逆に子供部屋の必要性を説く場面はありません。それでもなお「子供部屋は要らない」とまでは言っていないのは、おそらくどんなに家族関係が良好でも人間関係がギクシャクすることがあり、その際にはプライベート空間に逃げる余地も残しておくべきと考えているからではないかと私は思っています。

一方で、そういうイレギュラーな必要性を以って「子供部屋は必要」と言うほどでもないため、「立派な子供部屋は要らない」、つまり子供を勉強に集中できるようにと隔離する必要はないと述べるにとどまっているのだと考えられます。

「学習机は要らない」わけではない

本書では物置と化した学習机の描写が何度となく登場します。普通でしたらこの状況を以って「学習机は要らない」と断言してもおかしくないところです。しかし、不思議なことに、そんなことは一切この本には書かれていません。

もし本書で「学習机は要らない」と言っておきながらコイズミファニテックと学習机の開発をしていたら笑いものになっていたと思います。しかし、そこは四十万先生です。しっかりと筋道が通っていると思います。

私自身も数々のお宅にお邪魔する中で、物置と化した学習机を幾度となく見てきました。それでも学習机はないよりはあったほうが良いと考えています。

散らかった学習机を目の前にして「うちの子、ぜんぜん机で勉強しないんですよー」と苦笑いするお母さんの姿を私は何度も見てきました。しかし、それはある意味ですごく幸せなことなんです。本書に書かれている通り、子供はお母さんやお父さん、兄弟姉妹のいるところのほうが落ち着くから、学習机に向かわないだけなのです。

もしその捉え方が正しかったとすれば、学習机は買う必要がなかったんじゃないかと言えるかもしれません。確かにそれは言えます。しかし、収納スペースとして学習机が必要だったかもしれないし、いざと言うときの逃げ場として必要だったかもしれません。

このあたり、あまり上手に説明できないのですが、つまるところは子供ひとりひとりの性格に向き合うしかないと私は考えています。我が家には二人の子供がおりますが、同じように育てているつもりでも、長女は机からビクとも動きませんし、逆に長男はそのときの気分で勉強する場所をコロコロ変えます。それでも長男に学習机が必要なかったかと言うとまったくそうは思いません。もし学習机を買わなかったら、彼の勉強する場所の選択肢をひとつ減らしていたわけですし、第一、彼は自分の机が大好きだからです。

 

ちなみに、有名私立中学校に行くような子供がいるお宅は片づいていると書かれている部分がありますが、これはウソです(苦笑)おそらく、よそ様に見せても恥ずかしくないお宅だけが取材に応じたのではないかと思います。

私がお邪魔させていただくお宅は片づいていないお宅が多いですが、そんなお宅でも頭のよい子はたくさんいます。そして、そんなお宅はもれなく親子のコミュニケーションの風通しが良い家ばかりでした。

よって私の経験から言えば、家の中が片づいていることと子供の学力の間には因果関係はないと言えます。収納のプロとしては不都合な真実と言えますが(苦笑)、それは紛れもない事実です。

だからこそ、とにもかくにも家族のコミュニケーションが大事ということが言えます。親が子供にしてやれることはアレしなさいコレしなさいと言うことではありません。子供にしっかり向き合い、必要な資材を揃え、その子にとって最適だと思われる環境を作ってあげることです。そしてそれができるのは、自分自身としっかり向き合って、自分らしく生きようとする人だけだと思います。そういうのが「親力」と言うのではないでしょうか。

ともあれ、『頭のよい子が育つ家』は単行本の発行から10年以上経ちますが、いま読んでも役に立つ良書です。これから子供の学習環境を整えたいと考えている方には是非ご一読いただければと思います。

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コメント 皆様からご質問・ご意見など

  1. hide より:

    収納マン様、こんにちは。
    最近、調べていてわかったのですが、学習机文化が発達しているのは日本位で、韓国も日本に及ばずという感じの様ですね。

    皆さん、何気に選んでいる様ですが、優秀な人間になる、将来の日本を担うということを考えれば、重要なことかもしれません。今の日本の繁栄やノーベル賞などの一翼を担っていたといってもいいかもしれません。
    残念なことに、家具や学習机を専門に研究されてる方は少なく、家政学部の住居学で触れる程度、家具の設計を学ぶ専門学校等聞いたことがありません。

    私も過去の経験から女性は価格重視、家を建てるにあたり、かなり衝突しました。家具を購入するときも、まかせたら好みに合わない安もの買われ、すぐダメになりました。
    そこで独身である私は、将来の子どものためと先手をうち、フリークの浜本製品を購入したわけです。

    家の設計や家具の購入は、価値観のぶつかりあいで難しいですね。

    • 収納マン より:

      hideさま

      こんにちは^^

      そうなんですよね。以前に「cool japan」に出演させていただいたときも海外の学習机事情について聞きましたが、やはり日本独自の文化と言って良さそうですね。
      海外では学習机があるという国でも、天板がMDF合板で脚などがスチール、天板昇降式などになっているようなものが一部にある程度のようです。

      日本はもともとタンス、ちゃぶ台、文机の文化で、椅子を使う学習机は明らかに西洋式の文化です。
      文机だとどうしても姿勢良く座ることが難しく、さらに蛍光灯付きの学習机が登場したことで、「子供が勉強する環境として良さそう」という認識が強まり、普及していったのではないかと思います。

      基本的に私はスチールデスクでも良いと思うんです。
      大事なのはむしろ、子供にとって何が最適かということを考えるということだと思っています。

      おっしゃる通り、今の日本の繁栄があるのは、そういう子供に対する思いが脈々と受け継がれているからではないかと思います。

      インテリア業界には家具の歴史やデザインについて詳しい人はたくさんいますけど、私のようにスペックで語る人はほとんどいないですね。
      もちろん、スペックについて語らせれば、メーカーの人たちは、私なんかよりもはるかに詳しいです。

      ただ、自動車業界だとそういうスペックの話が世間にも伝わるのですが、家具の場合は伝わってきません。
      世間が興味を持たないということも問題かもしれませんが、メーカーや販売店が努力を怠ってきたところのほうが大きいと思います。

      家具業界は未だに「良いものを作れば売れる、分かってもらえる」と信じて疑わないです。
      私が頑張って宣伝しても「良いものだから売れて当然」と捉えられ、反対にちょっとディスると苦情が入ります(苦笑)
      原価率が高くて販促費がほとんど考慮されておらず、私のほうで宣伝してもこんな調子ですから、もうどうすりゃええねんって感じですね^^;